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2012年1月 9日 (月)

アニメ化希望! - 越谷オサム「いとみち」 -

越谷オサム著「いとみち」(新潮社2011/初出「新潮ケータイ文庫DX」2010~2011)を読んだ。

この作家のことは全く知らなかったが、昨年の11月に、書店でたまたま手に取った「陽だまりの彼女」(売れているらしい)を読んで、そのどうにも言えぬ「くすぐったさ」と語り口の軽やかさが気に入り、別の作品を探していた時に見付けた本だ。

そして不純だが、帯にあった次の文句が購入の決め手になった。

「お、おがえりなさいませ、ごスずん様」

訛ってはいるが、言うまでもなく「メイド喫茶」の決まり文句である。

初めに断っておくが、私は「読書家」でもないので、「書評」じみたことは書けない。この本について取り上げているブログはいくらでもあるので、気になる方は検索してそれらを読んでいただくことをお奨めする。

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さて、本題に戻ろう。もう、いや、とにかく主人公の「いと」が「めごい」。それがすべてと言っても良い。

背がちっちゃくて、訛り(津軽弁)のコンプレックスから、極度の人見知りと泣き虫、不器用でドジっ娘、なんて設定は、反則的である。

そんないとちゃん(そう呼びたくなる)が、人見知りを治そうと、青森市にあるメイド喫茶でアルバイトを始める。しかし、その「萌え設定」が災いして、なかなかお店になじめない。とにかくおばあちゃん譲りの津軽弁によって、メイド喫茶の常套句である「お帰りなさいませ、ご主人様」の挨拶すら、満足に言うことができない。

いとちゃんには、津軽三味線の心得がある。しかし、脚を思いっきり開いて演奏する自分の姿が恥ずかしくて、一年前にやめてしまった。物語の縦糸は、こうしたいとちゃんの思春期特有の「コンプレックス」を克服していく過程である。

思春期の真っ最中は、こうしたコンプレックスは自分にしかない、と思いがち。でも、先輩メイド二人、店長、そしてお客も、いろいろなコンプレックスがあるのだ、ということをいとちゃんは知っていく。そこから、いとちゃんの「進化」は劇的に始まっていくのだ。

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・・・いろいろ書きたいことがあるのに、上手くまとまらない。ごめんなさい。

よく、人は変わりたいと思った時にはもう変わり始めているのだ、いつでも人はスタートし直せるのだということを聞く。いとちゃんは、メイド喫茶でアルバイトを始めた時点で変わっていたのである。私は実はそういう考え方が非常に苦手なのであるが、この物語はそうしたことがテーマではあっても、説教くさいことは一切なく、素直にいとちゃんの成長物語として楽しむことができた。

また、「家族」が一つの大きなテーマだ。いとちゃんは、母親を小さい頃に亡くしているが、自分のコンプレックスだった背の小ささと、脚を大きく開く三味線の演奏スタイルが母親譲りだったことを知って、ずっと強くなっていく。物語の終盤での「トラブル」も、家族の支えがあって乗り越えることができた。なかなかなじめなかったお店も、いつしか、「家族」のように思えるようになった。

そして、「陽だまりの彼女」でも感じた「くすぐったさ」がこの物語にもあった。思春期特有の「コンプレックス」と、その裏返しである「自意識過剰」な心理描写が良く書けていて、それがそう思わせるのかもしれない。

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こんなに「めごい」いとちゃんのお話は、アニメの好きな御仁には、絶対ヒットすると思う。お奨めである。そして、これを映像で見てみたい。実写もいいが、アニメがいちばん雰囲気を伝えられていいと思う。但し連続アニメは、話の展開上、結構難しいと思われるので、単発のOVAか映画がいちばんふさわしい。

津軽弁が難しいかもしれないが、別に本職の声優である必要はない。単に青森出身の「素人」の女の子の方が、いとちゃんの「初々しさ」にはいちばんフィットするように思える。おばあちゃんの津軽弁は、記号で書かれるほど聴きとりにくい、という設定だが、声優の選定にあたっては、そこまで訛りを強くする必要は必ずしもないと思う。

とにかく、アニメ化なってほしい、と強く思っている次第である。

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コメント

初めまして。「いとみち」の書評を検索していたら、たまたま(?)此方へ行きあたりました。
アニメ化を希望されるとの事ですね。面白いと思います。此方の本ですが、私は作者やその他の作品は全く知らず、単に地元の本屋さんで表紙を見て殆ど衝動買いみたいな感じで買いました。そして関西方面へラジオ番組のイベント遠征するために列車内で読んでました。
新幹線の列車内で読めてしまいました。そのラジオ番組のイベントでもパーソナリティの方に、この本を紹介しておきました。アニメか実写ドラマ、若しくは舞台で上演して欲しい本と言うことで。キャスティングについては私なりのイメージで想像してみました。
宜しければ、此方をご覧くださいませ。
http://mspower.at.webry.info/201201/article_13.html

M's Powerさん、ようこそはじめまして。コメントありがとうございます。

M's Powerさんも「いとみち」を読まれて、アニメ化など他のメディアで実現してほしい、と思っていらっしゃるのですね。声優さんの構想なども見させていただきましたが、私はそちらの方はほとんど分からないので、もっといろいろなご意見を聞いてみたいです。

越谷オサムさんという作家は私も知りませんでした。初めて読んだ作品は、記事にも書きましたように「陽だまりの彼女」です。その他にもいくつか出版されているそうですが、いろいろな書評を読む限り、青春小説がお得意のようです。私としても、これから、越谷さんの作品をいろいろと読んでみたいと思っています。

「陽だまりの彼女」もお勧めです。こちらもアニメ化すると面白いかもしれません(但し深夜枠限定ですが)。

更新の頻度は非常に低いですが、よろしかったら、またいらして下さいね。

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