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2012年2月 7日 (火)

健常者と障害者の間に横たわる「障害」 - 有川浩「レインツリーの国」 -

有川浩「レインツリーの国」(新潮社2006/新潮文庫2009)を読んだ。

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向坂伸行には中学生の頃に夢中になって読んだライトノベルがあった。しかし、その結末にずっと納得いかないでいた。ある日、そのライトノベルのことを思い出し、インターネットで感想などを検索していたところ、「レインツリーの国」と題されたウェブサイトに行きあたった。そこに書かれた感想に共感した伸行は、そのサイトの管理人「ひとみ」にメールを出した。それがきっかけで、伸行とひとみはメールのやり取りを始める。次第に伸行は、ひとみに会ってみたいと思うようになり、やっとの思いで「デート」にこぎつける。しかし、ひとみの不可解な言動に次第に伸行はいらだちを深め、ついにはいさかいが起きてしまうが、ひとみにはそうなってしまう理由があって・・・

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私は、メールがきっかけで男女が出会うという設定には、年甲斐もなく弱い。私にも、女性とメールをやり取りした経験があるが、それにはかなり苦い思い出と、今でも苦しい思いをしている。だから、伸行が「会ってみたい」という気持ちになることは、非常に理解できる。

まあ、そんなことは、この小説にはきっかけに過ぎない。念願かなって「ボーイ・ミーツ・ガール」になった後、伸行とひとみが分かりあっていく努力をすることが主題である。

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ひとみには聴覚の障害がある。それがもとで、いろいろと傷つく経験を重ねた結果、「どうせ他人には分かってもらえない」という諦めに支配されてしまった。伸行は何とかして彼女の心を開かせようとするのだが、彼女はそれをかたくなに拒む。

健常者が障害のある人に接するのは勇気のいることだ。よしんば繋がりができたとしても、どうしたってその人の障害を本当に理解することはできない。しかも「障害を気にすることなんかない」という言葉が、却って障害者を傷つけてしまう。

しかしそれでは「普通の話」だ。有川氏はそういう通り一遍の話にはしなかった。相当勇気がいったと思うが、障害者側からのアプローチにも問題がある、と書いているのだ。そこは、私も簡単に書くことができないが、有川氏が本編で上手く扱っているので、そちらに任せることにする。それでも、「健常者側の理屈だ」と言われてしまうのかもしれないけれど。

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ひとみは、最後は伸行の勧めに従い、補聴器を隠すために長くしていた髪をバッサリと切って、障害を隠さずに生きていくことを決めた。恋愛などできないと思っていたのも、伸行と思いを通わせることができたのである。

この作品に少々難点があるとすれば、伸行の「人ができ過ぎている」ということだ。でも、ハッピーエンドな恋愛物語は好きである(それこそ年甲斐もない)。

・・・あえて読まないでいるのだが、「図書館戦争」シリーズは読む必要があるのかなあ。この作品とリンクしているそうだし、気にはなっている。

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