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2012年2月13日 (月)

読書メモ:中田永一「くちびるに歌を」

中田永一著「くちびるに歌を」(小学館2011)を読んだ。

長崎県の五島列島にある中学校の合唱部に、産休になった教師の代わりに臨時教師がやってきた。女子しかいなかった合唱部に、その臨時教師を目当てに男子が数人入部したことから始まる青春小説。

愛人を作って家を出ていった父親のせいで、「男性不信」になっている仲村ナズナと、学校ではほとんど影が薄く、自閉症の兄がいる桑原サトルの二つの視点から物語が描かれる。合唱部は、NHK全国学校音楽コンクール(Nコン)への出場を目指して練習しているが、その課題曲である「手紙~拝啓十五の君へ~」に絡ませ、臨時教師が合唱部のメンバーに宿題として出した15年後の自分に宛てた手紙をところどころに挟みながら、物語は進む。

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正直、少し「もったいない」感じがした。中盤以降はテンポよく、文字通り一気に読めてしまうだけに、前半のもたつき感が残念。そのテンポの悪さからナズナとサトルの視点が交互に変わるのに慣れるまで、少々時間がかかった。

また、「手紙」がNコンの課題曲となったのは、2008年のこと。架空の歌ではなく、実在の歌をテーマにしただけに、2011年(今作の発表年)から3年前のことを今では成長したナズナとサトルは思い出して述懐しているのか、2008年が小説の「現在」なのかが気になってしまった。なぜなら、彼らの述懐にでてくる言葉の端々が、とても中学生では使わないような少々難しい単語であったりするからだ。「現在」をどこに置くかで、この小説の解釈が変わってしまう。

ところで、Nコンでは、課題曲と自由曲の両方を演奏する。「手紙」は、NHKの紅白歌合戦でも歌われた有名な曲で、私にも分かるのだが、この合唱部は、自由曲に、臨時教師が作曲し、ナズナが作詞(サトルが肉付け、メンバー全員で修正)した曲を選んでいる。物語の過程で「男性不信」が徐々に薄れていく(そうなったきっかけと理由が少し分かりにくかったが)思春期真っ最中のナズナが、どんな詞を書いたのか、まったく触れられていないのが非常に残念だった。もしこれが明らかになっていたら、「手紙」との対比で、もっと物語が膨らんだのではないかと思う。

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残念なところもあるが、全体に爽やかな青春小説だった。

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