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2015年6月

2015年6月26日 (金)

【再掲】わたしだけのかみさま(「ハピネスチャージプリキュア!」アフターストーリー)



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【再掲:2015/6/26】

このお話を作るきっかけになったイラストを、この絵師さんがブラッシュアップして下さり、しかも掲載を許可して下さいました。ここで改めてお礼を申し上げます。ああ、めぐみちゃんとちょっと困った顔のレッド様が可愛い!

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ツイッターでお世話になっている絵師さんが、レッドとめぐみの素敵なイラストを先日掲載しました。それに触発されて、このお話を書きました。上手にまとまっていませんが、よろしければお付き合いください。

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「わたしだけのかみさま」

俺はレッド。一応、「惑星レッド」という星を守護する精霊だ。人間には「神」と呼ばれる存在。

惑星レッドは遠い過去には栄えていたが滅んでしまった。俺には「ブルー」という弟がいて、彼は「地球」を守護しているが、その地球の繁栄と「美しさ」に俺は次第に嫉妬し、「過ち」を犯してしまった。弟の「恋人」を操って、地球を侵略し、さらには滅ぼそうとしたのだ。

ブルーはその「愛」で世界中にプリキュアを誕生させ、俺が操った「恋人」であるミラージュの率いる幻影帝国と戦わせた。その戦いは一進一退だった。

世界のプリキュアの中で最強だったのが「ハピネスチャージプリキュア」だった。その中心にいたのが「キュアラブリー」こと「愛乃めぐみ」という少女。俺が最も忌み嫌った「愛」の名前を頂くプリキュアだ。

ミラージュは俺が何度洗脳しようと試みても、ブルーのことを完全には諦め切れていなかった。ハピネスチャージプリキュアが幻影帝国に最終決戦を挑んだ時に、そこに真っ先に気づいたのがラブリーだった。ラブリーことめぐみは、ブルーに恋心を抱いていたようだが、ミラージュとブルーはお互いがお互いを必要としているということに気づいて、ミラージュを俺の洗脳から解き放ってしまった。

俺は焦った。しかし、同時にめぐみのことにも興味を持ち始めた。

めぐみは自分の幸せよりも、他人の幸せの方を極端に優先する傾向があった。だから、ミラージュとブルーが元の鞘に収まった時、彼女は喜びはしたが、数々の戦いの中で、彼女の中の何かが変わりつつあった。彼女は、自分が「失恋」したことに気づいて、その感情の動き自体が初めての体験であり、それを制御できなくなっていた。俺はそこに付け入ることにした。

初めは彼女自身をミラージュのように操ろうとしたが、予想以上の意志の強さによりそれは失敗した。それは、彼女には幼馴染の「誠司」という心の支えがあったからだ。めぐみ自身は気づいていないようだったが、誠司は確実に幼馴染という関係を越えて、めぐみを愛している。俺は誠司の、めぐみを守りたくても守れない、自分の思いに気づいてくれない、という焦りを利用して、彼を操ることにした。

でも、それもめぐみの「愛」の前に結果的に失敗に終わった。俺は、自暴自棄になって、惑星レッドを地球にぶつけて、ともに滅びようという作戦に出た。

一方で、あれだけ「愛」を忌み嫌っていたはずの俺が本当に渇望していたのは「愛」だった、ということに気づかされつつあった。それを体現しているのは、他でもないラブリーことめぐみだった。だから、ラブリーに「俺を愛せ」と率直に告白した。

ラブリーは、俺のこんな歪んだ愛の形をも受け入れるような「フォーエバーラブリー」に進化した。その後の戦いは、自分でも敗れるということは分かっていた。しかし、しばらくは彼女と拳を交えながらも、語り合いたいと思った。こんな俺でも愛してくれる人間がいることが単純に嬉しかったのだ。結果的に俺は敗れて、惑星レッドも地球も救われた。

前置きが長くなってしまった。ラブリーことめぐみとの最終決戦の後、俺は、弟であるブルーと、彼の恋人(もう妻と言ってよいか)ミラージュともに、惑星レッドの復興に取り組んでいる。一度荒廃してしまった星を復興させるのはいばらの道だ。あと何百年、何千年、何万年かかるか分からない。時々絶望感に襲われることもある。そういう時に思い出すのが、めぐみの「愛」だ。

俺や弟は、鏡を使うことによって、自分の守護する星の様子を観察したり、行きたい場所へ移動することができる。復興に必要なものを地球から調達するために、その「力」をたびたび使うことがある。それ以外にも、俺のような「神」が、その「力」を使って、年頃の女の子の様子を観察するのは、本当は良いことではないことは分かっているが、めぐみのことが恋しくなった時は、彼女の様子を鏡を通して見ることがある。

めぐみは、仲間と元気に暮らしているようだ。誠司のことも、だんだんと意識し始めていることが分かる。それだけに、俺のめぐみへの思いも募っていくのだった。

めぐみと直接会って話がしたい。一度会えば、少しは自分の気持ちを鎮めることができる。連日の復興作業の疲れに加え、ブルー夫婦が自分の前で「いちゃついている」のも食傷気味だ。決めた。

今日は休日だし、めぐみが自分の部屋にいることは分かっていた。でも、いきなり現れるのは失礼だ。だから、鏡を通して呼びかけてみた。

「めぐみ、めぐみ」

「え、誰?どこから私を呼んでいるの?」

「ここだ。お前の部屋の姿見から呼んでいる」

「あっ、レッド!久しぶり!元気だった?今日はどうしたの?」

彼女はあの人懐っこい笑顔で次々と俺に質問をぶつけて来る。それだけでも俺は嬉しかったが、こっちに来いとは言ってくれない。当たり前だ。相手は年頃の女の子。男を簡単に部屋に入れることはできない。仕方がないので、こちらから申し出た。

「あ、あのな、めぐみ。言いにくいんだが、今からそっちへ行ってもいいか?」

「え、私と会いたかったの?だったら早く言ってくれればいいのに。遠慮しないでこっちにおいでよ。私だって直接会って話をしたいよ」

「本当にいいのか?普通の年頃の女の子は、警戒するものだぞ」

「え、レッドに変な下心があるとは思えないよ。確かに悪いことをしたかもしれないけど、私はレッドがそんな悪人じゃないことは知ってる。だからおいでよ」

そんなことを言われて、「下心」のある俺は恥ずかしくなった。促されるまま俺は彼女の部屋の中へ入った。

「本当に久しぶりだね、レッド。鏡を通して見るより元気そうで良かった。また会えて本当に嬉しいよ。あ、立って話しているのもなんだから、ちょっとちらかっているけど、その辺に座って。あまりお構いできないけど、今、お茶とお菓子を持ってくるから」

「いや、お構いなく」

俺が言い終わるか終らないうちに、彼女はキッチンへ走って行った。

その間に、彼女の部屋の中を眺めてみる。女の子らしいと言えばそうだが、割りとこざっぱりした感じだ。すると、机の片隅に、ピンクの光るものを見つけた。思わず手に取ってしまった。それは、最終決戦の後、ブルーがハピネスチャージプリキュアの仲間たちに渡した「愛の結晶」だった。

めぐみは確か、自分に大切な人ができたらこれをあげる、と誠司に言っていた。誠司もそれに同意した。誠司にはめぐみが大切なのは明白だから、誠司はめぐみと交換したいと思っているはずだが、めぐみからそれを言いだすまで、まだ関係は進んでいないらしい。少しホッとすると同時に、そんなことを思った自分自身に驚いた。

「あ、レッド、それ」

キッチンから戻ってきためぐみが、慌てた様子で声をかける。はっと我に返る。

「す、すまない。これはブルーがめぐみたちに与えたものだろう?」

「そう、私の宝物。私がプリキュアだったことは、苦しいこともあったけど、大切な思い出。辛いことがあると、これを見て、プリキュアだった私に乗り越えられない困難はないって、自分を奮い立たせることができるんだ」

「そうか」

その「思い出」の中には、ブルーへの恋も含まれているのだろうか。

「でも、そんなことに頼らなくてもいいくらい、私に誰か大切な人ができたら、その人にあげるんだ。でも、まだ本当に「大切」な人が誰かはまだ分からないんだ」

「そうか。そういう人が早く現れるといいな」

俺はめぐみの大切な人が誠司であることは分かっている。でも、そんなことを言うのは野暮だ。また、できればそれまでの時間が長くあって欲しいと、どこかで思っている。

「さあ、座って座って。惑星レッドのことをもっと聞かせて」

座るや否や、めぐみは胡坐をかいた俺の膝の間に、座ってもたれかかってきた。俺は少し慌てた。

「お、おい。無防備すぎるんじゃないか」

「言ったでしょ、レッドに変な下心があるなんて思っていないって。それに、私は一人っ子だし、お父さんもほとんど家にいないから、あまりこうしてもらったことがないんだ。レッドは、私にとってお兄さんみたいなものだから、ちょっと甘えさせてよ」

それから、俺とめぐみはいろいろな話をした。でも、話したことを良く覚えていない。俺はめぐみの体温をじかに感じ、どこか上の空だった。

ただ、めぐみの顔を見ると、うっすらと目に隈ができているのに気付いた。また、少し眠そうだった。

「めぐみ、なんだか眠そうだけど、大丈夫か?目に隈ができている」

「あ、分かっちゃった?女の子なのに恥ずかしいよ。あのね、私たちもう受験生でしょ?ひめは国に帰っちゃうみたいで寂しいけど、誠司とゆうゆうといおなちゃんは同じ高校を目指しているみたいで、私も一緒にそこへ入りたいんだ。だけど、プリキュアやってた時に、ブルーにも叱られたけど、私の成績は学年の下から数えた方が早いの。だから今、その分、勉強を頑張らなくちゃならなくて、毎晩遅くまで、誠司と一緒に勉強してる。って言うか、一方的に私が教えられているんだけどね。誠司は教え方は上手いんだけど、なかなか厳しくてね」

やっぱり、誠司のことが大切なんだな、と俺はちょっと嫉妬した。すると、めぐみは、ちょっとウトウトし始めた。

「おい、ちゃんとベッドで寝た方がいいんじゃないか。風邪をひくぞ。俺も帰るから。」

「ううん、大丈夫だよ。久しぶりに会ったんだから、もうちょっとゆっくりしていってよ。」

そう言い終わるや否や、めぐみはスーっと寝息を立てて、俺の膝の間で眠ってしまった。

「おい、めぐみ、起きろ。ちゃんとベッドで寝なきゃ」

「うーん、もう少し、こうさせていて、お兄ちゃん。ううん、わたしだけのかみさま・・・」

寝言だが、そんなことを言われて、俺はドキッとした。そして、帰るタイミングを逃してしまった。まあいいか、誠司がここに来るまで、こうさせてもらおうか。

<終わり>

2015年6月21日 (日)

ふたりのないしょばなし  - 「ハピネスチャージプリキュア!」アフターストーリー5 -

ある土曜日の夜、氷川いおなは、ブルースカイ王国大使館の白雪ひめの部屋にいた。しかし、全然落ち着かない。前日にひめに「お泊まり会しない?うちにおいでよ」と誘われたからだが、パートナーのぐらさんを連れてこないように釘を刺されたほか、リボンもめぐみもゆうこもそこにはいなかったからだ。しかも、ひめは今シャワーを浴びていて、部屋にはいない。つまりは部屋に独りきりだ。

すでに食事は終えていた。その料理もひめが一人で(正確にはリボンに「少し」手伝ってもらったそうだが)こしらえたそうで、見栄えは少し悪かったものの、量も質も満足できるものだった。また、シャワーも先に使わせてもらっていて、今はパジャマ姿だ。

いおなは落ち着かずにひめの部屋を見回した。自分の質素な部屋とはずいぶん趣が違う。とにかくぬいぐるみがたくさんある。特に大きなにわとりのようなぬいぐるみは目を引いた。近づいてよく見ると、少し汚れていて、ほつれもあった。ひめのお気に入りであることがうかがいしれた。

「お待たせー!」と急にパジャマ姿のひめが部屋に戻ってきた。いおなはびっくりして、そのにわとりから離れて、居住まいを正した。

「なんでそんなに緊張してるの?もっとくつろいだらいいのに。私といおなの仲でしょ?何も遠慮することはないわよ。なんならそのにわとり、貸してあげる。これね、結構抱きしめると落ち着くんだよ。私のお気に入りなんだ」

ひめはそう言って、いおなにそのにわとりを押しつけた。いおなは黙ってそれを受け取った。しかし、やはり落ち着かない。しばらく沈黙が流れた。

「いおなぁ、やっぱり私と二人きりだと落ち着かない?ディナーの時もあまりしゃべらなかったし」口火を切ったのはひめだった。

「実はそうなの。普段はだいたいみんなと一緒にいるし、それに、「お泊まり会」というからみんなと一緒なのかと思ったら、ひめと二人きりだったし。」

「仲間になる前とは違うんだから、気を遣うことなんてないよ。それとも、まだ私のことが嫌いなの?」

「そんなことないわよ。仲間になる前は私がひめの事情も知らずに一方的に憎んでいただけなんだし、幻影帝国との戦いももう終わったこと。ひめを嫌いなわけないでしょ。ひめのことは大好きよ」

「ありがと。でも、そのことなんだけどね」ひめは神妙な口調になった。

「今日いおなだけを招待したのはね、いおなに改めて謝りたいと思ったことと、ありがとうを言いたかったから」

「え?ひめはもう私に十分謝ってくれたわ。そのおかげで私はまたプリキュアに変身できるようになったし、みんなと仲間になって戦えた。ありがとうを改めて言わなければいけないのは私の方だわ」

「ううん、やっぱりこれだけは言わせて。3年間、いおなから大好きなまりあさんを奪ってしまって、本当にごめんなさい。」

「本当にもういいのよ。お姉ちゃんもひめのこと恨んでない」

「それから、この間の「プリキュアウィークリー」での私の謝罪会見で、いおなとまりあさんが私を一生懸命かばってくれた。本当にありがとう」

「あの時は大変だったわね。でも、かばったというのはちょっと違うわよ。それに、お姉ちゃんと私だけじゃない。ゆうこがキュアラインを使って、自分が助けた世界中のプリキュアに連絡を取ってくれて、みんなも一緒に会見に臨んでくれた。特にハワイのオハナとオリナは真っ先に駆けつけてくれた。そして、私たちの正体を知っている増子さんも味方してくれた。世界的大ニュースにはなったけど、あんなに引っ込み思案だったひめが、一切言い訳せずに謝罪した。本当に頑張ったわね。まさに「勇気のプリキュア」よ」

「ありがとう、私が強くなれたのはみんなのおかげだよ。それに私はブルースカイ王国の王女。将来は女王になるのだから、国の代表として当たり前のことで、いつかはしなければならないことだったから」

「いつもはお調子者のひめがしんみりしているのは、なんかこっちまで調子が狂っちゃうわ」

「ひどーい!せっかく人が真面目な話をしてるのに!」ひめは手足をばたばたさせた。

「本当にひめは一国のお姫様なの?たまに、というかいつもそれを疑っちゃうわ」

「しょ・う・し・ん・しょ・う・め・い・の・お・ひ・め・さ・ま!あんなことがなかったら、君たちは私と話できないどころか、近づくことだってできなかったんだからね!頭が高ーい!」

「よかった。いつものひめに戻って。私はそんなお姫様らしくないひめが好きよ」

「な、なんてこと言うのよ!照れるじゃないの!」ひめは真っ赤になった。

「と、とにかく、いおなが話をそらしちゃったから、この話はもうおしまい!これからは、ふたりだけのないしょばなしをしようよ」

「ないしょばなし?具体的にはどんな?」いおなはひめに顔を近づけた。

「うーん、まずは、プリキュアのことから始めよっか。私、前から不思議に思っていたことがあってね。いおなは神様から「愛の結晶」を受け取っていないのに、プリキュアに変身できたのよね?ずっとどうしてかな、って思っていて。神様自身も不思議だったみたい。自分の知らないプリキュアが活躍しているって」

「今はひめのおかげでフォーチュンピアノで変身しているけど、その前はプリチェンミラーで変身していたことは知っているわね。キュアテンダーことお姉ちゃんは世界中を飛び回って活躍していたプリキュアで、神様の信頼も厚かった。ひめがアクシアを開けてしまって幻影帝国が復活してしまったことなんかも、お姉ちゃんに話していた。神様はプリキュアであることを自分の家族にも秘密にするよう言っていたみたいだけど、お姉ちゃんは家族に自分がプリキュアであることやそういう事情を打ち明けてた。でも、神様は何も言わなかったみたい」

「だから、いおなは私がアクシアを開けてしまったことや、私の長ったらしい本名を知っていたのね。私はフォーチュンからいつも「あなたのせいよ!」と言われていて悲しかったし、なんでそんな秘密を知っているのか不思議だった」

「あの頃は本当にごめんなさい。でも私は、そんな世界を守っている強いお姉ちゃんが大好きだったし憧れていたの。お姉ちゃんがプリキュアハンター・ファントムに封印されてしまった日は、世界中を飛び回って世界中のプリキュアの助力をして回っていた頃で、久しぶりに家に帰ってきていたの。嬉しかった私はお姉ちゃんと出かけて、その帰り道にファントムと出くわした。お姉ちゃんは私の目の前で変身して、物陰に隠れているように言った」

「でも、負けちゃったのよね。。。」ひめの表情が曇った。しかし、いおなは悲しそうな表情をみせずに続けた。

「そう。初めは互角に戦ってた。だけど、卑怯にもファントムは、隠れていた私を見つけて、私を封印しようとした。それをお姉ちゃんがかばおうとして隙ができたところに、ファントムが再び攻撃を仕掛けて、お姉ちゃんはまともにくらってしまいダメージを受けて、変身が解けてしまった。そして、すぐにお姉ちゃんを封印した」

「そんなことがあったなんて。。。いおなが私を恨んでも仕方がないわね。本当にごめんなさい。」

「だから、もういいって。その時、ぐらさんが命がけでお姉ちゃんのプリチェンミラーを拾ってくれて、それを私に渡してくれた。私は悲しかったけれど、それよりも何よりもお姉ちゃんのかたきを討ちたかった。だから、プリチェンミラーに祈った。「私をプリキュアにしてください」って。そして変身呪文を唱えたら本当に変身できちゃった。自分でもびっくりしたけど、ぐらさんがいちばんびっくりしていたみたい。それで、ぐらさんは私のパートナーになったの」

「その時って、小学5年生だったのよね。そんなに小さかったのに、強かったなんてすごごごーい!」

「まあね。お姉ちゃんには今でもかなわないけれど、プリキュアになってから空手の稽古はそれまで以上に頑張ったことは確かね。だけど、プリキュアの力の源が「愛」なのに、私の場合はそうじゃなかった。幻影帝国への怒りはもちろんだけど、ひめにも恨みを持っていたからね。だから、本来なら私はプリキュア失格で、変身すらできなかったはずなの。今考えると、そちらの方が不思議ね」

「それは、いおなが私を恨んでいたとしても、まりあさんへの愛がそれよりも強かったから変身できたのよ、きっと。それに、私が負け続けていたときに、なんやかんや言いながらも、フォーチュンは私を助けに来てくれた。これも愛だよ」

「ありがとう。少し気持ちが楽になったわ。それに、私はひめにもっとありがとうを言わなけりゃならない。私がファントムに「プリキュア墓場」に連れてこられて封印されてしまいそうになったとき、真っ先にあの空間に飛び込んできてくれたのがプリンセスだった。私はひめをさんざん無視してきたのに、どうして?」

「いおなが私の秘密をばらしちゃった後も、めぐみやゆうこは私のことを友達だって言ってくれた。その喜びを感じていたときに、ふっといおなのことが頭をよぎったの。フォーチュンは確かに強いけど一人で戦っていて、本当は私と同じように怖いんじゃないかって。だから、めぐみとゆうこを仲間に誘ったんじゃないかって思ったら、いてもたってもいられなくなった。ちょうどその時に、ぐらさんがフォーチュンの急を知らせてくれた。プリキュア墓場には行けないと神様には言われたけれど、一生懸命祈ったら、奇跡的にあの空間に行くことができたの」

「あの時は変身も解けて、もうどうしようもなくて、絶望的になってた。でも、プリンセスたちが駆け付けてくれて、すごく嬉しかった。それにひめは、一生懸命集めたプリカードを私に全部くれた。そのおかげで、私はまたプリキュアの力を得ることができた。本当にありがとう」

「いいのよ。それでも私のしたことは全部償えたとは思ってない。でも、結局プリカードってなんだったんだろうね?」ひめはいたずらっぽく笑った。

「そうね。カードを使っていろいろ変装したりおしゃれを楽しんだりはしたけど、プリカードをファイルいっぱいにして願い事をかなえるということは、結局、私しかできなかった。だけど、その力を使わなくても、結果的にみんなの願いはかなったんじゃないかな。ひめは国を取り戻すことができたし、ゆうこの「世界中のみんながご飯をおいしく食べられるようになりますように」という願いも戦いが終わってかなえられた。ただ、めぐみの願いだけはかなわなかった」いおなは少ししんみりした口調になった。

「そうね。おかあさんの病気は治らなかったもんね」ひめも言葉を継いだ。

「でも、めぐみは「みんなの願い」をかなえてくれた。引っ込み思案な私を友達にしてくれたことをきっかけに、ハピネスチャージプリキュアとしてみんなと仲良くするきっかけをつくってくれて。そしてミラージュさんと神様の仲を取り持って、そのことで二人が幸せになっただけでなくて、レッドも地球も救うという大きな願いをね」

「そうね。でも、めぐみ自身の「幸せ」をもっと大切にしてほしいわよね」

「めぐみの幸せってなんだろう?神様には失恋しちゃったもんね」

「恋愛だけが幸せではないわよ。それに、そうだとしても相楽くんがそばにいるじゃない」

「あー、あの二人を見てると、じれったくて仕方ないのよね。めぐみも悪いけど、誠司はもっと悪い!」ひめは語気を強めた。

「あらあ、相楽くんにときめいちゃったひめが言えることかしら?」いおながいたずらっぽく笑った。

「あ、あれは「吊り橋効果」だったのよ!私の黒歴史!それに私の理想は、白馬に乗ったイケメンの王子様なんだから!」

「はい、はい。まあそれに、最近、毎朝通学途中で抜けると思ったら、ナマケルダもとい生瀬さんを起こしに行っているみたいだしね!」

「な、なんでそれを!」ひめは慌てた。

「あんまりそんなことが続くから、ぐらさんにこっそりひめの後をつけさせたの。そしたら、生瀬さんをたたき起しているひめを見つけたってわけ」

「み、みんなは知ってるの?」ひめはもうしどろもどろだ。

「ううん、このことはぐらさんと私だけのひ・み・つ。リボンにも言ってないから安心して」

「ううー、いおなに弱みを握られたー!やばやばいよー!」

「どうして?生瀬さん、確かに頼りないけど、よく見ればなかなかイケメンじゃない。それに、「人形の国」に行った時に、ひめが一目ぼれした「ジーク王子」にも少し似ているわね。でも、どうして生瀬さんを起こすようになったのよ?」いおなはたたみかけた。

「そ、それは、神様からもらった「愛の結晶」を投げたら、増子さんから逃げていた生瀬さんに当たっちゃったからよ!愛の結晶が当たった人と友達になるって決めていたから、前は敵だったかもしれないけど、友達になりたいと思ったの!でも、生瀬さんは、毎朝会社に遅刻するくらいだらしないから、しょうがないけど、毎朝起きているか確認して、起きてないみたいだったら起こしに行ってるの!」

「ぐらさんの話では、結構楽しそうだった、って言ってたわよ。いっそのこと国に連れて帰ったら?」いおなは容赦がない。

「ああー、うるさいうるさい!生瀬さんを国王なんかにしたら、「めんどくさいですぞ」とか言って、国の政治をほっぽり出して、国が傾いちゃうわ!」

「あら?私は「連れて帰ったら?」と言っただけで、別に「結婚したら?」なんて一言も言ってないわよ?」

ボッと音が出るくらい、ひめは真っ赤になってしまった。

「いおなはずるい!それに私と生瀬さんはそんな関係じゃない!この話はここでおしまい!そ、そんなことより、いおなの方はどうなのよ?」

「私の方って?」

「とぼけないで!海藤くんとはうまくいってるの?」

「裕哉くんとは・・・」と言いかけて、いおなは真っ赤になって、慌てて口を押さえた。

「ほほう、もう下の名前で呼び合っているのかね、いおなくん!」ひめはにやりと笑った。

「ああもう!そうよ!下の名前で呼び合ってるわよ!悪い!?」いおなはやぶれかぶれになった。

「別に悪くなんかないわよ。で、いおなの方からは告白したの?」

「ま、まだそんなところまでいってないわよ。裕哉くんとはいいお友達よ。好きとかまだ分からないわ」

「またまたぁ。「そんなところまでいってない」って、もう十分海藤くんのことを意識してるじゃない」今度はひめがたたみかけた。

「そ、そうかもしれないわね。ひめの言う通りかもしれない。高校も同じところに行けたらな、なんて思ってる」いおなは急にしおらしくなった。

「まあ、いおなの気持ちは分かったわ。もうこれくらいにしてあげる。それに、このことはめぐみたちにも黙っていてあげる。二人だけのひ・み・つ。その代わり、生瀬さんのこともめぐみたちにはしゃべらないで」

「分かったわ、約束する。あ、でも、ゆうこは何か勘付いているみたい」

「なっ!ゆうこは何もかもお見通しなところがあるから、怖い時があるのよね」

「ほんとよね。でも、この話はもうおしまい。ねえ、一度ひめの国のことをゆっくり聞きたかったの。なんで、シャイニングメイクドレッサーの力をひめが引き出す時に、日本の神社のお神楽に使う鈴を使ったのか、とか、そもそも何で日本のミラージュさんと別れた神様がブルースカイ王国にいてアクシアがあったのか、とかいろいろ知りたいことがいっぱいあるの」いおなは目を輝かせて言った。

「よろしい。このひめ大先生が教えてしんぜよう」

ひめは咳払いして、いおなの疑問に答えていった。そんな二人の夜は静かに更けていった。

<終わり>

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いおなはひめをずっと憎んでいました。途中で仲間になれましたが、あまり二人の直接の絡みの話がなかったので、やっぱりどこかお互いに遠慮していたところはあったと思います。

また、事情があったにしろ、ひめには「アクシアを開けてしまった」という厳然たる「罪」があります。例えばこれが現実世界であったら、ひめは世界中から糾弾されるでしょう。でも、ここは「ハピネスチャージプリキュア」の世界。勇気を出して謝ったら、許してくれるような優しい世界であってほしいと思います。

だから、二人のわだかまりを完全に解いてあげたくて、そして、ひめの「十字架」を解放してあげたいという思いで、このお話を書きました。

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