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2015年6月21日 (日)

ふたりのないしょばなし  - 「ハピネスチャージプリキュア!」アフターストーリー5 -

ある土曜日の夜、氷川いおなは、ブルースカイ王国大使館の白雪ひめの部屋にいた。しかし、全然落ち着かない。前日にひめに「お泊まり会しない?うちにおいでよ」と誘われたからだが、パートナーのぐらさんを連れてこないように釘を刺されたほか、リボンもめぐみもゆうこもそこにはいなかったからだ。しかも、ひめは今シャワーを浴びていて、部屋にはいない。つまりは部屋に独りきりだ。

すでに食事は終えていた。その料理もひめが一人で(正確にはリボンに「少し」手伝ってもらったそうだが)こしらえたそうで、見栄えは少し悪かったものの、量も質も満足できるものだった。また、シャワーも先に使わせてもらっていて、今はパジャマ姿だ。

いおなは落ち着かずにひめの部屋を見回した。自分の質素な部屋とはずいぶん趣が違う。とにかくぬいぐるみがたくさんある。特に大きなにわとりのようなぬいぐるみは目を引いた。近づいてよく見ると、少し汚れていて、ほつれもあった。ひめのお気に入りであることがうかがいしれた。

「お待たせー!」と急にパジャマ姿のひめが部屋に戻ってきた。いおなはびっくりして、そのにわとりから離れて、居住まいを正した。

「なんでそんなに緊張してるの?もっとくつろいだらいいのに。私といおなの仲でしょ?何も遠慮することはないわよ。なんならそのにわとり、貸してあげる。これね、結構抱きしめると落ち着くんだよ。私のお気に入りなんだ」

ひめはそう言って、いおなにそのにわとりを押しつけた。いおなは黙ってそれを受け取った。しかし、やはり落ち着かない。しばらく沈黙が流れた。

「いおなぁ、やっぱり私と二人きりだと落ち着かない?ディナーの時もあまりしゃべらなかったし」口火を切ったのはひめだった。

「実はそうなの。普段はだいたいみんなと一緒にいるし、それに、「お泊まり会」というからみんなと一緒なのかと思ったら、ひめと二人きりだったし。」

「仲間になる前とは違うんだから、気を遣うことなんてないよ。それとも、まだ私のことが嫌いなの?」

「そんなことないわよ。仲間になる前は私がひめの事情も知らずに一方的に憎んでいただけなんだし、幻影帝国との戦いももう終わったこと。ひめを嫌いなわけないでしょ。ひめのことは大好きよ」

「ありがと。でも、そのことなんだけどね」ひめは神妙な口調になった。

「今日いおなだけを招待したのはね、いおなに改めて謝りたいと思ったことと、ありがとうを言いたかったから」

「え?ひめはもう私に十分謝ってくれたわ。そのおかげで私はまたプリキュアに変身できるようになったし、みんなと仲間になって戦えた。ありがとうを改めて言わなければいけないのは私の方だわ」

「ううん、やっぱりこれだけは言わせて。3年間、いおなから大好きなまりあさんを奪ってしまって、本当にごめんなさい。」

「本当にもういいのよ。お姉ちゃんもひめのこと恨んでない」

「それから、この間の「プリキュアウィークリー」での私の謝罪会見で、いおなとまりあさんが私を一生懸命かばってくれた。本当にありがとう」

「あの時は大変だったわね。でも、かばったというのはちょっと違うわよ。それに、お姉ちゃんと私だけじゃない。ゆうこがキュアラインを使って、自分が助けた世界中のプリキュアに連絡を取ってくれて、みんなも一緒に会見に臨んでくれた。特にハワイのオハナとオリナは真っ先に駆けつけてくれた。そして、私たちの正体を知っている増子さんも味方してくれた。世界的大ニュースにはなったけど、あんなに引っ込み思案だったひめが、一切言い訳せずに謝罪した。本当に頑張ったわね。まさに「勇気のプリキュア」よ」

「ありがとう、私が強くなれたのはみんなのおかげだよ。それに私はブルースカイ王国の王女。将来は女王になるのだから、国の代表として当たり前のことで、いつかはしなければならないことだったから」

「いつもはお調子者のひめがしんみりしているのは、なんかこっちまで調子が狂っちゃうわ」

「ひどーい!せっかく人が真面目な話をしてるのに!」ひめは手足をばたばたさせた。

「本当にひめは一国のお姫様なの?たまに、というかいつもそれを疑っちゃうわ」

「しょ・う・し・ん・しょ・う・め・い・の・お・ひ・め・さ・ま!あんなことがなかったら、君たちは私と話できないどころか、近づくことだってできなかったんだからね!頭が高ーい!」

「よかった。いつものひめに戻って。私はそんなお姫様らしくないひめが好きよ」

「な、なんてこと言うのよ!照れるじゃないの!」ひめは真っ赤になった。

「と、とにかく、いおなが話をそらしちゃったから、この話はもうおしまい!これからは、ふたりだけのないしょばなしをしようよ」

「ないしょばなし?具体的にはどんな?」いおなはひめに顔を近づけた。

「うーん、まずは、プリキュアのことから始めよっか。私、前から不思議に思っていたことがあってね。いおなは神様から「愛の結晶」を受け取っていないのに、プリキュアに変身できたのよね?ずっとどうしてかな、って思っていて。神様自身も不思議だったみたい。自分の知らないプリキュアが活躍しているって」

「今はひめのおかげでフォーチュンピアノで変身しているけど、その前はプリチェンミラーで変身していたことは知っているわね。キュアテンダーことお姉ちゃんは世界中を飛び回って活躍していたプリキュアで、神様の信頼も厚かった。ひめがアクシアを開けてしまって幻影帝国が復活してしまったことなんかも、お姉ちゃんに話していた。神様はプリキュアであることを自分の家族にも秘密にするよう言っていたみたいだけど、お姉ちゃんは家族に自分がプリキュアであることやそういう事情を打ち明けてた。でも、神様は何も言わなかったみたい」

「だから、いおなは私がアクシアを開けてしまったことや、私の長ったらしい本名を知っていたのね。私はフォーチュンからいつも「あなたのせいよ!」と言われていて悲しかったし、なんでそんな秘密を知っているのか不思議だった」

「あの頃は本当にごめんなさい。でも私は、そんな世界を守っている強いお姉ちゃんが大好きだったし憧れていたの。お姉ちゃんがプリキュアハンター・ファントムに封印されてしまった日は、世界中を飛び回って世界中のプリキュアの助力をして回っていた頃で、久しぶりに家に帰ってきていたの。嬉しかった私はお姉ちゃんと出かけて、その帰り道にファントムと出くわした。お姉ちゃんは私の目の前で変身して、物陰に隠れているように言った」

「でも、負けちゃったのよね。。。」ひめの表情が曇った。しかし、いおなは悲しそうな表情をみせずに続けた。

「そう。初めは互角に戦ってた。だけど、卑怯にもファントムは、隠れていた私を見つけて、私を封印しようとした。それをお姉ちゃんがかばおうとして隙ができたところに、ファントムが再び攻撃を仕掛けて、お姉ちゃんはまともにくらってしまいダメージを受けて、変身が解けてしまった。そして、すぐにお姉ちゃんを封印した」

「そんなことがあったなんて。。。いおなが私を恨んでも仕方がないわね。本当にごめんなさい。」

「だから、もういいって。その時、ぐらさんが命がけでお姉ちゃんのプリチェンミラーを拾ってくれて、それを私に渡してくれた。私は悲しかったけれど、それよりも何よりもお姉ちゃんのかたきを討ちたかった。だから、プリチェンミラーに祈った。「私をプリキュアにしてください」って。そして変身呪文を唱えたら本当に変身できちゃった。自分でもびっくりしたけど、ぐらさんがいちばんびっくりしていたみたい。それで、ぐらさんは私のパートナーになったの」

「その時って、小学5年生だったのよね。そんなに小さかったのに、強かったなんてすごごごーい!」

「まあね。お姉ちゃんには今でもかなわないけれど、プリキュアになってから空手の稽古はそれまで以上に頑張ったことは確かね。だけど、プリキュアの力の源が「愛」なのに、私の場合はそうじゃなかった。幻影帝国への怒りはもちろんだけど、ひめにも恨みを持っていたからね。だから、本来なら私はプリキュア失格で、変身すらできなかったはずなの。今考えると、そちらの方が不思議ね」

「それは、いおなが私を恨んでいたとしても、まりあさんへの愛がそれよりも強かったから変身できたのよ、きっと。それに、私が負け続けていたときに、なんやかんや言いながらも、フォーチュンは私を助けに来てくれた。これも愛だよ」

「ありがとう。少し気持ちが楽になったわ。それに、私はひめにもっとありがとうを言わなけりゃならない。私がファントムに「プリキュア墓場」に連れてこられて封印されてしまいそうになったとき、真っ先にあの空間に飛び込んできてくれたのがプリンセスだった。私はひめをさんざん無視してきたのに、どうして?」

「いおなが私の秘密をばらしちゃった後も、めぐみやゆうこは私のことを友達だって言ってくれた。その喜びを感じていたときに、ふっといおなのことが頭をよぎったの。フォーチュンは確かに強いけど一人で戦っていて、本当は私と同じように怖いんじゃないかって。だから、めぐみとゆうこを仲間に誘ったんじゃないかって思ったら、いてもたってもいられなくなった。ちょうどその時に、ぐらさんがフォーチュンの急を知らせてくれた。プリキュア墓場には行けないと神様には言われたけれど、一生懸命祈ったら、奇跡的にあの空間に行くことができたの」

「あの時は変身も解けて、もうどうしようもなくて、絶望的になってた。でも、プリンセスたちが駆け付けてくれて、すごく嬉しかった。それにひめは、一生懸命集めたプリカードを私に全部くれた。そのおかげで、私はまたプリキュアの力を得ることができた。本当にありがとう」

「いいのよ。それでも私のしたことは全部償えたとは思ってない。でも、結局プリカードってなんだったんだろうね?」ひめはいたずらっぽく笑った。

「そうね。カードを使っていろいろ変装したりおしゃれを楽しんだりはしたけど、プリカードをファイルいっぱいにして願い事をかなえるということは、結局、私しかできなかった。だけど、その力を使わなくても、結果的にみんなの願いはかなったんじゃないかな。ひめは国を取り戻すことができたし、ゆうこの「世界中のみんながご飯をおいしく食べられるようになりますように」という願いも戦いが終わってかなえられた。ただ、めぐみの願いだけはかなわなかった」いおなは少ししんみりした口調になった。

「そうね。おかあさんの病気は治らなかったもんね」ひめも言葉を継いだ。

「でも、めぐみは「みんなの願い」をかなえてくれた。引っ込み思案な私を友達にしてくれたことをきっかけに、ハピネスチャージプリキュアとしてみんなと仲良くするきっかけをつくってくれて。そしてミラージュさんと神様の仲を取り持って、そのことで二人が幸せになっただけでなくて、レッドも地球も救うという大きな願いをね」

「そうね。でも、めぐみ自身の「幸せ」をもっと大切にしてほしいわよね」

「めぐみの幸せってなんだろう?神様には失恋しちゃったもんね」

「恋愛だけが幸せではないわよ。それに、そうだとしても相楽くんがそばにいるじゃない」

「あー、あの二人を見てると、じれったくて仕方ないのよね。めぐみも悪いけど、誠司はもっと悪い!」ひめは語気を強めた。

「あらあ、相楽くんにときめいちゃったひめが言えることかしら?」いおながいたずらっぽく笑った。

「あ、あれは「吊り橋効果」だったのよ!私の黒歴史!それに私の理想は、白馬に乗ったイケメンの王子様なんだから!」

「はい、はい。まあそれに、最近、毎朝通学途中で抜けると思ったら、ナマケルダもとい生瀬さんを起こしに行っているみたいだしね!」

「な、なんでそれを!」ひめは慌てた。

「あんまりそんなことが続くから、ぐらさんにこっそりひめの後をつけさせたの。そしたら、生瀬さんをたたき起しているひめを見つけたってわけ」

「み、みんなは知ってるの?」ひめはもうしどろもどろだ。

「ううん、このことはぐらさんと私だけのひ・み・つ。リボンにも言ってないから安心して」

「ううー、いおなに弱みを握られたー!やばやばいよー!」

「どうして?生瀬さん、確かに頼りないけど、よく見ればなかなかイケメンじゃない。それに、「人形の国」に行った時に、ひめが一目ぼれした「ジーク王子」にも少し似ているわね。でも、どうして生瀬さんを起こすようになったのよ?」いおなはたたみかけた。

「そ、それは、神様からもらった「愛の結晶」を投げたら、増子さんから逃げていた生瀬さんに当たっちゃったからよ!愛の結晶が当たった人と友達になるって決めていたから、前は敵だったかもしれないけど、友達になりたいと思ったの!でも、生瀬さんは、毎朝会社に遅刻するくらいだらしないから、しょうがないけど、毎朝起きているか確認して、起きてないみたいだったら起こしに行ってるの!」

「ぐらさんの話では、結構楽しそうだった、って言ってたわよ。いっそのこと国に連れて帰ったら?」いおなは容赦がない。

「ああー、うるさいうるさい!生瀬さんを国王なんかにしたら、「めんどくさいですぞ」とか言って、国の政治をほっぽり出して、国が傾いちゃうわ!」

「あら?私は「連れて帰ったら?」と言っただけで、別に「結婚したら?」なんて一言も言ってないわよ?」

ボッと音が出るくらい、ひめは真っ赤になってしまった。

「いおなはずるい!それに私と生瀬さんはそんな関係じゃない!この話はここでおしまい!そ、そんなことより、いおなの方はどうなのよ?」

「私の方って?」

「とぼけないで!海藤くんとはうまくいってるの?」

「裕哉くんとは・・・」と言いかけて、いおなは真っ赤になって、慌てて口を押さえた。

「ほほう、もう下の名前で呼び合っているのかね、いおなくん!」ひめはにやりと笑った。

「ああもう!そうよ!下の名前で呼び合ってるわよ!悪い!?」いおなはやぶれかぶれになった。

「別に悪くなんかないわよ。で、いおなの方からは告白したの?」

「ま、まだそんなところまでいってないわよ。裕哉くんとはいいお友達よ。好きとかまだ分からないわ」

「またまたぁ。「そんなところまでいってない」って、もう十分海藤くんのことを意識してるじゃない」今度はひめがたたみかけた。

「そ、そうかもしれないわね。ひめの言う通りかもしれない。高校も同じところに行けたらな、なんて思ってる」いおなは急にしおらしくなった。

「まあ、いおなの気持ちは分かったわ。もうこれくらいにしてあげる。それに、このことはめぐみたちにも黙っていてあげる。二人だけのひ・み・つ。その代わり、生瀬さんのこともめぐみたちにはしゃべらないで」

「分かったわ、約束する。あ、でも、ゆうこは何か勘付いているみたい」

「なっ!ゆうこは何もかもお見通しなところがあるから、怖い時があるのよね」

「ほんとよね。でも、この話はもうおしまい。ねえ、一度ひめの国のことをゆっくり聞きたかったの。なんで、シャイニングメイクドレッサーの力をひめが引き出す時に、日本の神社のお神楽に使う鈴を使ったのか、とか、そもそも何で日本のミラージュさんと別れた神様がブルースカイ王国にいてアクシアがあったのか、とかいろいろ知りたいことがいっぱいあるの」いおなは目を輝かせて言った。

「よろしい。このひめ大先生が教えてしんぜよう」

ひめは咳払いして、いおなの疑問に答えていった。そんな二人の夜は静かに更けていった。

<終わり>

-----

いおなはひめをずっと憎んでいました。途中で仲間になれましたが、あまり二人の直接の絡みの話がなかったので、やっぱりどこかお互いに遠慮していたところはあったと思います。

また、事情があったにしろ、ひめには「アクシアを開けてしまった」という厳然たる「罪」があります。例えばこれが現実世界であったら、ひめは世界中から糾弾されるでしょう。でも、ここは「ハピネスチャージプリキュア」の世界。勇気を出して謝ったら、許してくれるような優しい世界であってほしいと思います。

だから、二人のわだかまりを完全に解いてあげたくて、そして、ひめの「十字架」を解放してあげたいという思いで、このお話を書きました。

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コメント

二人の会話が微笑ましく可愛かったです^^
ただ王子のお名前はジーク王子ですよ~!

拙文をお読みいただき、またコメント頂きましてありがとうございました。「人形の国」の王子様の名前はど忘れしてしまって、調べればよかったのですが、筆も乗っていたのでそのままにしてしまいました。修正させて頂きました。ご指摘ありがとうございました。今度いらしたときはお名前をお聞かせ願えると幸いです。

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