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2015年9月22日 (火)

「ハピネスチャージプリキュア!」アフターストーリー4改訂版【ふたりのないしょばなし】 ― 氷川いおな & 白雪ひめ ―

ある土曜日の夜、氷川いおなは、ブルースカイ王国大使館の白雪ひめの部屋にいた。しかし、全然落ち着かない。前日にひめに「お泊まり会しない?うちにおいでよ」と誘われたからだが、パートナーのぐらさんを連れてこないように釘を刺されたほか、リボンもめぐみもゆうこもそこにはいなかったからだ。しかも、ひめは今シャワーを浴びていて部屋にはいない。つまりは部屋に独りきりだ。

すでに食事は終えていた。その料理もひめが一人で(正確にはリボンに「少し」手伝ってもらったそうだが)こしらえたそうで、見栄えは少し悪かったものの、量も質も満足できるものだった。また、シャワーも先に使わせてもらっていて、今はパジャマ姿だ。そのパジャマも今日のためにひめが選んだもので、普段自分が着ているような実用一辺倒なものではなく、フリルやレースがふんだんにあしらわれていたり、自分が変身する「キュアフォーチュン」のテーマカラーであるパープルだったりして、自分には可愛すぎるような気がして、余計落ち着かなかった。

いおなはひめの部屋を見回した。自分の質素な部屋とはずいぶん趣が違う。とにかくぬいぐるみがたくさんある。特に大きな「にわとり」のようなぬいぐるみは目を引いた。近づいてよく見ると、少し汚れていて、ほつれもあった。ひめのお気に入りであることがうかがいしれた。

「お待たせー!」

自分とデザインは同じだが色違いの水色のパジャマ姿のひめが、急に部屋に戻ってきた。いおなはびっくりして、そのにわとりから離れて、居住まいを正した。

「やっぱりそのパジャマ、いおなに似合ってるね!でも、なんでそんなに緊張してるの?もっとくつろいだらいいのに。私といおなの仲でしょ?何も遠慮することはないわよ。なんならそのにわとり、貸してあげる。これね、抱きしめると結構落ち着くんだよ。私のお気に入りなんだ。はい!」

ひめはそう言って、いおなにそのにわとりを押しつけた。いおなは黙ってそれを受け取った。しかし、やはり落ち着かない。しばらく沈黙が流れた。

「いおなぁ、やっぱり私と二人きりだと落ち着かない?ディナーの時もあまりしゃべらなかったし」

口火を切ったのはひめだった。

「実はそうなの。普段はだいたいみんなと一緒にいるし、それに、『お泊まり会』というからみんなと一緒なのかと思ったら、ひめと二人きりだし」

「仲間になる前とは違うんだから、気を遣うことなんてないよ。それとも、まだ私のことが嫌い?」

「そ、そんなことないわよ。仲間になる前は私がひめの事情も知らずに一方的に憎んでいただけなんだし、幻影帝国との戦いももう終わったこと。ひめを嫌いなわけないでしょ。ひめのことは大好きよ」

「ありがと。でも、そのことなんだけどね」

ひめは神妙な口調になった。

「今日いおなだけを招待したのはね、いおなに改めて謝りたいと思ったことと、ありがとうを言いたかったから」

「え?ひめはもう私に十分謝ってくれたわ。そのおかげで私はまたプリキュアに変身できるようになったし、みんなと仲間になって戦えた。ごめんなさいとありがとうを改めて言わなければいけないのは私の方だわ」

「ううん、やっぱりこれだけは言わせて。三年間、いおなから大好きなまりあさんを奪ってしまって、本当にごめんなさいっ!」

ひめは正座をして頭を下げた。

「本当にもういいのよ。お姉ちゃんもひめのこと全然恨んでない」

「それから、この間の『プリキュアウィークリー』での私の謝罪会見で、いおなとまりあさんは私を一生懸命かばってくれた。本当にありがとう」

「あの時は大変だったわね。でも、『かばった』というのはちょっと違うわよ。それに、お姉ちゃんと私だけじゃない。めぐみもゆうこも相楽くんも同席したし、それに、ゆうこがキュアラインで彼女が助けた世界中のプリキュアに連絡を取ってくれて、みんな駆けつけてくれた。特にハワイのオハナとオリナは真っ先に駆けつけてくれた。そして、私たちの正体を知っている増子さんも味方してくれた。世界的大ニュースにはなったけど、あんなに引っ込み思案だったひめが、一切言い訳せずに謝罪した。本当に頑張ったわね。ひめは本当に『勇気のプリキュア』の名に恥じない強いプリキュアになれたわね」

「ありがと。本当に強くなれたのかどうかはあまり自信がないけど、もしそうだとしたら、みんなのおかげだよ。それに私はブルースカイ王国の王女。将来は女王になるんだから、国の代表としていつかはしなくちゃならないことだったから」

いおなはそんなひめを見て急にいじらしく思えてきた。

(ひめはこれからもずっとこの『重荷』を背負っていかなくちゃならない。私がなんとか少しでも重荷を軽くしてあげられたら・・・でも、私はめぐみやゆうこみたいな愛情表現ができないし。少なくとも話題を変えなくちゃ)

いおなはそう思って、こう軽口をたたいた。

「いつもはお調子者のひめがしんみりしているのは、なんかこっちまで調子が狂っちゃうわ」

「ひどーい!せっかく人が真面目な話をしてるのに!」

ひめは手足をばたばたさせた。それを見て、いおなはちょっとからかってみたくなった。

「本当にひめは一国のお姫さまなの?たまに、というかいつもそれを疑っちゃうわ」

いおなはいたずらっぽく笑った。

「しょーしんしょーめーの、お・ひ・め・さ・ま!あんなことがなかったら、諸君は私と話ができないどころか、近づくことだってできなかったんだからね!頭が高ーい!」

「よかった。いつものひめに戻って。私はそんなお姫さまらしくないひめが好きよ」

「な、なんてこと言うのよ!照れるじゃないの!それに、あまりお姫さまらしくないことは少しは自覚してるし、直さなきゃいけないと少しは思ってるんだから・・・」

最後の言葉はしりすぼみになり、ひめは真っ赤になった。

「と、とにかく、いおなが話をそらしちゃったから、この話はもうおしまい!これからは、ふたりだけの『ないしょばなし』をしようよ」

「ないしょばなし?具体的にはどんな?」

いおなはひめに顔を近づけた。

「うーん、まずは、プリキュアのことから始めよっか。私、前から不思議に思ってたことがあってね。いおなは神様から『愛の結晶』を受け取っていないのに、プリキュアに変身できてたのよね?ずっとどうしてかなって思ってて。神様自身も不思議だったみたい。自分の知らないプリキュアが活躍してるって」

「結局プリキュアの話になっちゃうのね。まあ、いいわ。うん、今はひめのおかげで『フォーチュンピアノ』で変身しているけど、その前は『プリチェンミラー』で変身していたことは知っているわよね。『キュアテンダー』ことお姉ちゃんは、ゆうこみたいに世界中を飛び回って活躍していたプリキュアで、神様の信頼も厚かった。ひめが『アクシア』を開けてしまって幻影帝国が復活してしまったことなんかも、神様はお姉ちゃんに話していた。神様はプリキュアであることを自分の家族にも秘密にするよう言っていたみたいだけど、お姉ちゃんは家族に自分がプリキュアであることやそういう事情を打ち明けていた。でも、神様は何も言わなかったみたい」

「だから、いおなは私がアクシアを開けちゃった張本人だとか、私の長ったらしい本名を知ってたのね。私はフォーチュンからいつも『あなたのせいよ!』と言われていて悲しかったし、なんでそんな秘密を知っているのか分からなかった」

「あの頃は本当にごめんなさい。でも私は、そんな世界を守っている強くて優しいお姉ちゃんが大好きだったし憧れていたの。お姉ちゃんがプリキュアハンター・ファントムに封印されてしまった日は、世界中を飛び回って各地のプリキュアのサポートをしていた頃で、久しぶりに家に帰ってきていたの。嬉しかった私はお姉ちゃんと出かけて、その帰り道にファントムと出くわした。お姉ちゃんは私の目の前で変身して、私に物陰に隠れているように言った」

「でも、負けちゃったのよね・・・」

ひめの表情が曇った。しかし、いおなは悲しそうな表情を見せずに続けた。

「そう。初めは互角に戦っていた。だけど、卑怯にもファントムは、隠れていた私を見つけて、私を封印しようとした。それに気付いたお姉ちゃんは私をかばってくれたんだけど、その隙にファントムが攻撃して、お姉ちゃんはまともにそれをくらってダメージを受けて、変身が解けて封印されちゃったの」

「そういう事情だったなんて・・・いおなが私を恨んでも仕方がないわね。本当にごめんなさい」

「だから、もういいって。その時、ぐらさんが命がけでお姉ちゃんのプリチェンミラーを拾ってくれて、それを私に渡してくれた。その場は逃げ帰ったけれど、私は悲しくて仕方なかったし、それよりも何よりもお姉ちゃんのかたきを討ちたかった。だから、自分の部屋に戻ってから、プリチェンミラーに祈ったの、『私をプリキュアにしてください』って。そうしたら身体の中から不思議な力がわいてきて、お姉ちゃんがしていたように変身呪文を唱えたら本当に変身できちゃった。自分でもびっくりしたけど、ぐらさんがいちばんびっくりしていたみたい。それで、ぐらさんは私のパートナーになったの」

「その時って、小学五年生だったのよね。そんなに小さかったのに、強かったなんてすごごごーい!」

「でもひめは自分の国が侵略され始めた時からプリキュアやってるじゃない。日本で言うと四年生くらい?」

「それはそうだけど、戦うこと自体が怖かったから、自分の国を守れなかったし、こっちに逃げてきてからも、ちっとも勝てなくて、フォーチュンに助けてもらってばかりいたし。でも、その頃はフォーチュンに怒られてばっかりで、フォーチュンのことを『嫌な子』なんて思ってたけど」

「そのことは本当にごめんなさい。確かに初めのうちはあなたのことが憎かった。あなたのせいでお姉ちゃんが封印されたんだって。でもひめが、自分が引き起こしてしまった混乱を償おうと一生懸命戦っているのを見ているうちに、助けてあげたい、仲間になって一緒に戦いたい、と思うようになってきた。だけど、なかなか素直になれなかった。だから逆に、ひめに余計に辛くあたるようになっちゃった」

「そうだったんだ。いおなはやっぱり優しいし、か・わ・い・い♪」

「ば、バカ!なんてこと言うのよ!」

今度はいおなが真っ赤になった。

「でも私は、フォーチュンがなんだかんだ言っても助けてくれたことにはすごく感謝してるよ。それにフォーチュンは実際、『ぴかりが丘ナンバーワン』と言われるくらい強かったんだから」

「ありがとう。でも、私より強いプリキュアは世界中にたくさんいるわ。ただ、お姉ちゃんには今でもかなわないけれど、プリキュアになってから空手の稽古はそれまで以上に頑張ったことは確かね。だけど、プリキュアの力の源が『愛』なのに、私の場合はそうじゃなかった。幻影帝国への怒りはもちろんだけど、ひめにも恨みを持っていたから。だから、本当なら私はプリキュア失格で、変身すらできなかったはずなの。今考えると、そちらの方が不思議ね」

「それは、いおなが私を恨んでたとしても、まりあさんへの愛がそれよりも強かったから変身できたのよ、きっと。それに、さっきも言ったけど、フォーチュンはいつも私を助けに来てくれた。これも愛だよ」

「ありがとう。少し気持ちが楽になったわ。それに、私はひめにもっとありがとうを言わなくちゃならない。私がファントムに『プリキュア墓場』に連れてこられて封印されてしまいそうになった時、真っ先にあの空間に飛び込んできてくれたのがプリンセスだった。私はひめをさんざん無視してきたのに、どうして?」

「いおなが私の秘密をばらしちゃった後も、めぐみやゆうこは私のことを友達だって言ってくれた。その喜びを感じていたときに、ふっといおなのことが頭をよぎったの。フォーチュンは確かに強いけど、いつも一人で戦ってて、本当は昔の私と同じように怖いんじゃないかって。だから、めぐみとゆうこを仲間に誘ったんじゃないかって思ったら、いてもたってもいられなくなった。ちょうどその時に、ぐらさんがフォーチュンの急を知らせてくれた。プリキュア墓場には行けないと神様には言われたけれど、一生懸命祈ったら、奇跡的にあの空間に行くことができたの」

「あの時は変身も解けて、もうどうしようもなくて、絶望的になっていたわ。でも、プリンセスたちが駆け付けてくれて、すごく嬉しかった。それにひめは、一生懸命集めたプリカードを私に全部くれた。そのおかげで、私はまたプリキュアの力を得ることができた。本当にありがとう」

「いいのよ。それでも私のしたことは全部償えたとは思ってない。いおなや世界中の人たちから大切な人を奪ってしまった時間はどうやっても返ってこないもの」

いおなは、自分が思っているよりひめが傷ついていることを知って少し暗い顔になった。どう返したらいいか迷っているうちに、ひめの方から口を開いた。

「ところでさぁ、いおなは、私たちとは違うフォーチュンピアノで変身するじゃない?プリチェンミラーで変身してた時とどっちが気持ちいい?」

「な、なんてこと聞くのよ!」

いおなは不意を突かれて慌てたと同時に真っ赤になった。

「正直言うとね、私、変身する時、なんとも言えないくらい気持ちいいんだ。あの力が身体の中からわいてくる感じが。いおなが仲間になる前に、めぐみやゆうこにもちょっと聞いたことがあってね。二人とも言葉は違ったけど気持ちいいみたい。ゆうこはちょっとあれだけど。だから、いおなはどうなのかなって思って」

「この前の会見で、私たちが正真正銘の『ハピネスチャージプリキュア』だってことを証明するために、集まった皆さんの前で変身しなくちゃならなくて、すごく恥ずかしかったんだから!そんな恥ずかしいこと、答えられるわけないでしょ!」

「ふーん、『恥ずかしいこと』っていうくらいなんだ?正直に言っちゃいなよ」

「も、もう!分かったわよ!ここだけの話なんだからね。めぐみやゆうこには絶対言っちゃだめだからね!」

「うん、今はないしょばなしをしてるんだから、ここだけの話にするって約束するよ」

「ほんとにここだけの話よ。え、えっと、ミラーで変身していた頃は、幻影帝国への怒りとお姉ちゃんを絶対に取り戻してみせるという使命感だけで変身していたから、あんまりそういうことを感じる余裕もなかった・・・かな。で、でも、ひめのおかげでピアノを手に入れて初めて変身した時、仲間ができたっていう喜びからか、今までにないような力と・・・なんと言ったらいいかしら・・・そ、そうね、開放感と、高揚感を感じるようになった。そ、そういう意味では・・・ピアノで変身する方が・・・き、気持ちいいのかも・・・」

いおなは最後はうつむいて、もじもじしながら答えた。

「でしょでしょ~!フォームチェンジの時もイノセントフォーム発動の時も、それからプリカードを使った変装やドレスアップの時も、それぞれに気持ちがいいんだよね。これって『プリキュアの特権』だよね!」

「こらっ!そんなことを言うもんじゃないわよ!だいたい、あ・な・た・の・せ・い・で、世界中が混乱したから、『プリキュア』という存在が必要になったんだし、お姉ちゃんみたいに封印されちゃった人がたくさんいるんだからね!さっき反省したばっかりでしょ!ひめのいちばんダメなところは、そうやってすぐに調子に乗るところよ。まったくしょうがないんだから!」

「ご、ごめん。つい・・・。自分でも少しは自覚あるんだけど、これからは気をつけるようにするよ。ただ、本当はこれを話そうと思って振った話題だったんだけど、ちょっと話がそれちゃったんだ。本題は、結局のところ、『プリカード』ってなんだったんだろうねってこと」

ひめは皮肉っぽく笑った。

「そうね。カードを使っていろいろ変装したりおしゃれを楽しんだりはしたけれど、『プリカードがファイルいっぱいになると大いなる願いがかなう』ってことは、結局、私しか経験できなかった。だけど、その力を使わなくても、結果的にみんなの願いはかなったんじゃないかな。ひめは国を取り戻すことができたし、ゆうこの『世界中の人たちがごはんをおいしく食べられるようになりますように』という願いも戦いが終わったことでかなえられた。ただ、めぐみの願いだけはかなわなかった」

いおなは少ししんみりした口調になった。

「うん。おかあさんの病気は治らなかったもんね」

ひめも言葉を継いだ。

「その代わり、めぐみは『みんなの願い』をかなえてくれた。引っ込み思案な私を友達にしてくれたことで、ハピネスチャージプリキュアのチームだけじゃなく、学校やぴかりが丘の人たちみんなと仲良くするきっかけを作ってくれた。そしてミラージュさんと神様の仲を取り持って、最後にはレッドも地球も救うというビッグなビッグな願いもかなえてくれた。そういう意味ではめぐみ自身がプリカードだったのかもね」

「そうね。でもそれは分かるけれど、そんなみんなの願いをかなえてくれためぐみだからこそ、幸せになってほしい。めぐみは自分の幸せに無頓着なところがあるから、余計にそう思うわ」

「だけど、めぐみの幸せってなんだろう?神様には失恋しちゃったもんね」

「恋愛だけが幸せではないわよ。それに、そうだとしても相楽くんがそばにいるじゃない」

「あー、あの二人を見てると、じれったくて仕方ないのよね。めぐみも悪いけど、誠司はもっと悪い!」

ひめは語気を強めた。

「あらぁ?相楽くんにときめいちゃったことのあるひめが言えることかしら?」

いおながいたずらっぽく笑った。

「あ、あれは『吊り橋効果』だったのよ!私のく・ろ・れ・き・し!それに私の理想は『白馬に乗ったイケメンの王子様』なんだから!」

「はい、はい。まあでも、最近ときどき通学途中で抜けると思ったら、元ナマケルダの生瀬さんを起こしに行っているみたいだしね!」

「な、なんでそれを!」

ひめは慌てた。

「あんまりそんなことが続くから、この前、ぐらさんにこっそりひめの後をつけさせたの。そしたら、ひめが生瀬さんをたたき起している現場を押さえたってわけ」

「み、みんなは知ってるの?」

ひめはもうしどろもどろだ。

「ううん、今のところはぐらさんと私だけのひ・み・つ。リボンにも言ってないから安心して」

「ううー、いおなに弱みを握られたー!やばやばいよー!」

「どうして?生瀬さん、確かに頼りなさそうだけど、よく見ればなかなかイケメンじゃない。それに、『人形の国』に行った時にひめが一目ぼれした『ジーク王子』にも少し似ているわよね。でも、どうして生瀬さんを起こすようになったのよ?」

いおなはたたみかけた。

「そ、それは、神様からもらった『愛の結晶』を投げたら、増子さんに追いかけられていた生瀬さんに当たっちゃったからよ!結晶が当たった人と友達になるって決めてたから、前は敵だったかもしれないけど、友達になりたいと思ったの!でも、生瀬さんは、毎朝会社に遅刻するくらいだらしないから、しょうがないけど、毎朝起きているか確認して、起きてないみたいだったら起こしに行ってるのよ!」

「ぐらさんの話では『おひめちゃん、結構楽しそうだったぜ』って言ってたわよ。いっそのことブルースカイ王国に連れて帰ったら?」

「ああー!うるさいうるさい!生瀬さんを国王なんかにしたら、『めんどくさいですぞ』とか言って、国の政治をほっぽり出して、国が傾いちゃうわ!」

「あらぁ?私は『連れて帰ったら?』と言っただけで、別に『結婚したら?』なんて一言も言ってないわよ?」

「ボッ!」と音が出るくらい、ひめは真っ赤になってしまった。

「いおなはずるい!それに私と生瀬さんはまだそんな関係じゃない!この話はここでおしまい!そ、そんなことより、いおなの方はどうなのよ?」

「私の方って?」

「とぼけないで!海藤くんとはうまくいってるの?」

「裕哉くんとは・・・」

言いかけて、いおなは真っ赤になって、慌てて口を押さえた。

「ほほう、もう下の名前で呼び合っているのかね?いおなくん!」

ひめはにやりと笑った。

「ああもう!そうよ!下の名前で呼び合ってるわよ!悪い!?」

いおなはやぶれかぶれになった。

「別に悪くなんかないわよ。で、いおなの方からは告白したの?」

「ま、まだそんなところまでいってないわよ。裕哉くんとはいいお友達よ。好きだとかまだ分からないわ」

「またまたぁ。『そんなところまでいってない』って、もう十分海藤くんのことを意識してるじゃない」

今度はひめがたたみかけた。

「そ、そうかもしれないわね。ひめの言う通りかもしれない。それに裕哉くんは、私がイノセントフォームに目覚めるきっかけを作ってくれたから、とっても大切な人。私がプリキュアだったって分かってからも、今までのことをねぎらってくれて、しかも普通に接してくれてる。だから、高校も同じところに行けたらな、なんて思ってる」

いおなは急にしおらしくなった。

「まあ、いおなの気持ちは分かったわ。もうこれくらいにしてあげる。それに、このことはめぐみたちにも黙っててあげる。二人だけのひ・み・つ。その代わり、生瀬さんのこともめぐみたちにはしゃべらないで」

「分かったわ、約束する。あっ、でも、ゆうこは何か勘付いているみたいよ」

「なっ!ゆうこは何もかもお見通しなところがあるから、怖い時があるのよね」

「ほんとよね。でも、この話はもうおしまい。ねえ、一度ひめの国のことをゆっくり聞きたかったの。なんで、アクシアからシャイニングメイクドレッサーの力を引き出す時に、ひめが日本の神社のお神楽とそっくりな舞をしたのか、とか、そもそも何で日本のミラージュさんと別れた神様がブルースカイ王国にいて、アクシアがそこにあったのか、とかいろいろ知りたいことがいっぱいあるの」

いおなは目を輝かせて言った。

「よろしい。このひめ大先生が教えてしんぜよう。おっほん!」

ひめは咳払いして、プリチェンミラーにプリカードをセットすると、「せせせせせんせい・かわるんるん」という音声とまばゆい光とともに「先生」に変装した。そんな二人の夜は静かに、しかしにぎやかに更けていった。

<終わり>

【この作品について】

ブログに掲載した作品に大幅に加筆・修正したものです。主に加筆したところは、ええ、ゆうこのお話と同様に(以下略)。

いおなはひめをずっと憎んでいました。途中で仲間になりましたが、あの「お得よ!」回以外、あまり二人の直接的な会話のある話が少なかったので、やっぱりどこかお互いに遠慮していたところはあったと思っています。また、事情があったにしろ、ひめには「アクシアを開けてしまった」という厳然たる「罪」があります。例えばこれが現実世界であったなら、ひめは世界中から糾弾されるでしょう。でも、ここは「ハピネスチャージプリキュア」の世界。勇気を出して謝ったら、許してくれるような優しい世界であってほしいと思います。だから、二人のわだかまりを完全に解いてあげたくて、そして、ひめの「十字架」を解放してあげたいという思いで、このお話を書きました。

それから、前のお話のテーマである「ナマひめ」要素をこのお話にも入れていますが、私はこう考えています。公式の「設定資料集2」によると、ひめの両親は「国王」と「女王」となっていますが、これでは「王様が二人」ということになって現実ではありえません。ただ、父親である国王は母親である女王より「若い」という設定だそうで、多分、ブルースカイ王国の国家元首は女王の方で、しかも代々女系王族なのかもしれません。このお話で、ひめに「生瀬を国王にしたら」云々と言わせていますが、女系王族ならば、結婚すれば実際に国を司るのはひめで、生瀬は特に何もせずに一生暮らすことができるので、ちょうどいいのではないでしょうか。

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