カテゴリー「アニメ・コミック」の206件の記事

2016年8月15日 (月)

「ハピネスチャージプリキュア!」アフターストーリー「自分を照らす鏡の道 – 氷川いおな & 白雪ひめ & 生瀬 -」に寄せて

ショートストーリー(以下SS)本文は、pixivの下記URLへ掲載しています。必ずその説明文も併せてお読み下さい。その説明文に、SSの元となった写真のツイ主・撮影者の方とイラストを描かれた方のTwitterアドレス、写真ツイートとイラストツイートへのURLを記載しています。

http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=7127651

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4月のある日、Twitterの私のTL上に、ナマケルダ・キュアプリンセス・キュアフォーチュンのコスプレ合わせの写真と、それを元にしてそれぞれのキャラクターに置き換えたイラストが流れてきました。

私はこの写真とイラストを拝見して、ほほえましいと感じるとともに、すごく心の中に暖かいものを感じました。三人が並んでいる写真・イラストなのですが、その真ん中にプリンセスが満面のいたずらっぽい笑顔で両脇のナマケルダとフォーチュンの脇を抱えています。脇を抱えられた両脇のナマケルダとフォーチュンは、ちょっと困ったような笑顔を浮かべています。

私には、プリンセスはナマケルダとフォーチュンに安心しきっており、そのナマケルダとフォーチュンはプリンセスを暖かく見守っているように見えました。

私はこの写真とイラストにインスピレーションを受け、どうしてもお話を書きたいと思うようになりました。しかし、のゆきさんによる今春レイフレ発行の「ゆうこコレクション」への寄稿が終わったばかりで満足しきっておりましたし、しかも休職中で調子が安定しない中、書けるかどうか不安でした。それに、イラストは私が以前からフォローさせて頂いていた絵師さんが描かれたものでしたが、写真はFF外のレイヤーさんのものだったので、書いてよいものかどうかも迷いました。そこで、絵師さんに許可をもらった際、写真の出処についてもはっきりと明記した方が良いとアドバイスを受け、執筆をすることに決めました。

それが6月の初め頃。ちょうどリワーク(復職支援)プログラムの第2週目の頃です。「自主作業」の時間にこれを執筆するつもりでした。しかし、「自主作業」には「成果物」が求められることが分かるにつれ、この完成には時間がかかることが予想されたため、普段の自主作業の時間はブログ記事の執筆に充ててそれを成果物とすることにし、「定時(15:00)後」には作品を執筆することに方針を変えました。

ところが、ブログ記事の通り、私の調子は悪くなる一方で、平日は全く書けず、帰宅後や休日に数行ずつ書くような状態がずっと続きました。

そのうち、自分の「特殊性」を認められるようになった職場への「状況報告」あたりから、自主作業中や定時後にも書けるようになってきました。しかし、完成には程遠い状況でした。

そんなこんなで8月に入ってしまいました。このお盆休み前の10日は水曜日のため半日だけの「出勤」だったので、初めは朝から帰省するつもりでしたが、その半日が集団SSTに変更になったため出勤することにし、終わったら、最寄り駅から特急に乗って帰省することに決めました。それに加えて、帰省荷物はなるだけ持たず、しかしパソコンだけは持っていき、実家でお話を完成させようと決意しました。

帰省してからも集中できたりできなかったりしましたが、昨晩ようやく完成を見て、pixivに掲載しました。絵師さんには連絡し読んで頂きましたし、そこからレイヤーさんにもつながり、お二方からお礼の言葉を頂きました。

SSと言いながらも、文字数にして400字詰め原稿用紙40数枚、のゆきさんアンソロの時のレイアウト(B5サイズ2段組で本文8ポイント)換算で14ページとなりました。アンソロに参加するのだとしたら少し長いと思います。ただ、今日流れてきたツイートで、「小説類なら80ページ程度はほしい」というご意見もあったので、もし私が同人誌を出すのだったら、複数の話を詰めた短編集という形になるのかなと思います。アンソロ出稿時に約束した自家出版解禁期限が過ぎたら、今までのお話を集めてサークル参加するのも面白いかもしれません。本当は完全新作を1作は入れるべきでしょうが、今の状況では、修正のうえ再録が精いっぱいでしょう。

このお話を書くにあたり、素晴らしい写真を撮られたレイヤーさん、そしてイラストを描かれた絵師さんに、心から御礼申し上げます。

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内容については、「いおひめ」メインで「ナマひめ」風味となっています。そしてテーマは「自制」と「見守り」です。

ひめといおなの関係は、過去の確執を乗り越えて仲間になりましたから、お互いを「思いやり過ぎる」のが長所でもあり、それが短所でもあるハピネスチャージプリキュアチームの中では、ほかの二人との関係とは違った意味を持っています。また、それだけに深いと思います。

だから、ひめが帰国していちばん寂しがるのはいおなだと思います。また、ひめは将来の女王即位に向けて、今までの「わがまま」を捨てなくてはならず、ますます「自制」が求められるようになりますから、いおなのことを「心の師匠」としてずっと慕い続けることでしょう。そしていおなは、ひめが即位しても見守り続けることでしょう。

前提条件は、今まで書いたお話を踏襲しています。もう正体バレしているという条件は、私としてはゆるぎなく、また譲れないものです。そして、「プリキュア」であることは一種の「特権」ですが、それを振りかざさない限り許されているという「優しい世界」感です。それから私は「変身フェチ」ですので、その辺の「恥ずかしい表現」は、今回はそのイメージからいちばん遠いいおなに頑張ってもらいました(笑)。

また全体にわたって気を遣ったのは、正体名と変身名の使い分けです。ほぼ全体にわたって、変身の状態で会話していますが、「ひめ」・「いおな」としてふるまったり、思い考えていたりする時は、「ひめ」・「いおな」と呼ばせています。逆に「プリキュア」としてふるまっている時は「(キュア)プリンセス」・「(キュア)フォーチュン」としています。生瀬については、ハピプリクラスタの中で定着した「ナマセルダ」を使わせて頂きました。

もし、表現などに気になる点がありましたら、ご指摘くださると幸いです。またご感想を頂けると嬉しいですので、よろしくお願い致します。

2016年5月 9日 (月)

【今さらですが】レインボーフレーバー14にて大森ゆうこアンソロに参加しました。

今さらになってしまいましたが、4月30日(金・祝)に「大田区産業プラザPIO」にて開催された「プリキュアシリーズオンリーイベント レインボーフレイバー14」に一般参加しました。

今回は私がこんな状況ということもあり、後述するアンソロに寄稿したにもかかわらず、参加するかどうかをかなり迷ったのですが(本当に寝付けないくらいに悩んだ)、東京のS君からお誘いがあったことに背中を押されて、思い切りました。S君、本当にありがとう。

レイフレへの参加は前回に続いて2回目です。ずいぶん前にも別作品でオンリーに参加したことがあるので改めて感じたことですが、オンリーは本当に「居心地がいい」ですね。コミケのように「なんでもある」というのもいいですが、同じ作品・シリーズの好きな人たちだけが集まるので、あまりとげとげしい雰囲気にならず、比較的のんびりしていることがいちばん良いところだと思っています。

今は収入がいつもより少ないので倹約しなければならないのですが、結果的には散財でした。でも、久しぶりに大好きと言える「プリキュア」を全身に浴びることができて、幸せハピネス増量でした。

サークルの方ともお話が少しはできました。Twitterでしか知らない方とお会いできるのも楽しいことの一つです。

サークルのジャンルは、放送中の「まほプリ」は思っていたよりも少なく(まあ、始まってまだ1クールですし)、多かったのは「オールスターズ(シリーズまたがり)」、前作「姫プリ」、そして私の大好きな「ハピプリ」。既に2年前の作品で、しかも世評が低かったにもかかわらず、思った以上にハピプリが頑張っていて、嬉しい限りでした。ただ「ナマひめ」がやたら多かった(笑)。好きなカプだから嬉しいですが。

そして、コミケではかなり不利な「小説」がかなりありました。私も含めてですが、どうしても分かりやすさとか可愛さを求めようとするとどうしてもマンガを選びますし、本屋に並んでいるものとは違って、じっくりと「立ち読み」して購入を決めることもできません。それに、少しでも多く頒布しようとすれば、表紙をどなたかに描いて頂いた方が見栄えがしますが、そこまで親しくなれるにはハードルが高いです。私も絵が描けませんので、そういう「ジレンマ」を抱えながらも、「読んでもらいたい」という熱意で参加されている方たちには、尊敬の念を抱いています。そう言う方たちとお話すると、やはり熱意がものすごく感じられました。

コスプレイヤーさんもたくさんいらっしゃいました。姫プリは思ったより少なかった気がします。それもノーブル学園の制服が多かったので、やはりあの「ドレス」の制作が大変なのだと思います(それでもおひとりすごいドレスの方がいらっしゃいました)。他シリーズはほとんどが変身コスですが、「細かいネタ」の方もちらほら。「田植えオーバーオールひめちゃん」のコスの方が印象に残っています。悪役も多いのも楽しかったです。姫プリのラスボス「クローズ」は見かけなかった気がしますが、「シャット」は複数いらっしゃいましたね。

そんなことでイベントは楽しんだのですが、本当に伝えなければいけないのは、タイトルの件。

サークル名「ろーぷあいらんど」の「みやのゆき」さんが主宰した、大森ゆうこアンソロ「ゆうこコレクション」に小説で参加しました。1月に参加募集があり、参加を迷っていたのですが、休職となってしまったので、何かをしなければならないという思いで参加を決めました。

内容は、こことpixivに掲載した拙作「私の秘密」を書いてから、自分の中でゆうこの「解釈」が変わったので、それを下敷きにしながらも、時間を一年後に進め、ファンファンの力を借りて大幅に改変したものとなりました。テーマは「ゆうこの我慢とその解放」です。但し、私の「フェチ」的なところ(変身時のあれやこれや)は、ほぼそのままです(苦笑)。

例によって分量が多くなってしまったので、のゆきさんにはお忙しい中、レイアウトの変更などを強いてしまいました。申し訳ありませんでした。ですが、そのおかげで削ったりすることなく、全文を載せて頂いたので、非常に感謝しております。

題名は「真夜中の空中散歩 - 大森ゆうこ & ファンファン -」です。pixivには導入部を掲載しています。

アドレス: http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6713936

また、「とらのあな」にて委託通販が開始されました。

アドレス: https://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/41/19/040030411919.html?rec=genre

ご興味のある方はどうぞよろしくお願いします。

また、「ゆうこコレクション」と同時に、氷川いおなアンソロ「いおなコレクション」も同時発行されました。私はこちらへは参加できませんでしたが、多くの方が両方に参加されていて、双方が関連付けられるように工夫されています。そういう読み方もできますので、のゆきさんに代わりまして、こちらの方もよろしくお願いします。

アンソロへの参加も、前回のキュアリュータさんの「虹色ハピネス」に続き2回目ですが、やはり自分の作品が「印刷」されて形に残るのは、その作品の出来はともかく(恥をさらしているようなもの)、本当に嬉しいものですね。

もう次回のレイフレに向けて、他の方のアンソロの企画もいろいろと動き出しているようです。それらに参加できるかどうか分かりませんが、機会があればまた参加してみたいと思っています。

みやのゆきさん、素敵な企画どうもありがとうございました。

2015年9月22日 (火)

「ハピネスチャージプリキュア!」アフターストーリー4改訂版【ふたりのないしょばなし】 ― 氷川いおな & 白雪ひめ ―

ある土曜日の夜、氷川いおなは、ブルースカイ王国大使館の白雪ひめの部屋にいた。しかし、全然落ち着かない。前日にひめに「お泊まり会しない?うちにおいでよ」と誘われたからだが、パートナーのぐらさんを連れてこないように釘を刺されたほか、リボンもめぐみもゆうこもそこにはいなかったからだ。しかも、ひめは今シャワーを浴びていて部屋にはいない。つまりは部屋に独りきりだ。

すでに食事は終えていた。その料理もひめが一人で(正確にはリボンに「少し」手伝ってもらったそうだが)こしらえたそうで、見栄えは少し悪かったものの、量も質も満足できるものだった。また、シャワーも先に使わせてもらっていて、今はパジャマ姿だ。そのパジャマも今日のためにひめが選んだもので、普段自分が着ているような実用一辺倒なものではなく、フリルやレースがふんだんにあしらわれていたり、自分が変身する「キュアフォーチュン」のテーマカラーであるパープルだったりして、自分には可愛すぎるような気がして、余計落ち着かなかった。

いおなはひめの部屋を見回した。自分の質素な部屋とはずいぶん趣が違う。とにかくぬいぐるみがたくさんある。特に大きな「にわとり」のようなぬいぐるみは目を引いた。近づいてよく見ると、少し汚れていて、ほつれもあった。ひめのお気に入りであることがうかがいしれた。

「お待たせー!」

自分とデザインは同じだが色違いの水色のパジャマ姿のひめが、急に部屋に戻ってきた。いおなはびっくりして、そのにわとりから離れて、居住まいを正した。

「やっぱりそのパジャマ、いおなに似合ってるね!でも、なんでそんなに緊張してるの?もっとくつろいだらいいのに。私といおなの仲でしょ?何も遠慮することはないわよ。なんならそのにわとり、貸してあげる。これね、抱きしめると結構落ち着くんだよ。私のお気に入りなんだ。はい!」

ひめはそう言って、いおなにそのにわとりを押しつけた。いおなは黙ってそれを受け取った。しかし、やはり落ち着かない。しばらく沈黙が流れた。

「いおなぁ、やっぱり私と二人きりだと落ち着かない?ディナーの時もあまりしゃべらなかったし」

口火を切ったのはひめだった。

「実はそうなの。普段はだいたいみんなと一緒にいるし、それに、『お泊まり会』というからみんなと一緒なのかと思ったら、ひめと二人きりだし」

「仲間になる前とは違うんだから、気を遣うことなんてないよ。それとも、まだ私のことが嫌い?」

「そ、そんなことないわよ。仲間になる前は私がひめの事情も知らずに一方的に憎んでいただけなんだし、幻影帝国との戦いももう終わったこと。ひめを嫌いなわけないでしょ。ひめのことは大好きよ」

「ありがと。でも、そのことなんだけどね」

ひめは神妙な口調になった。

「今日いおなだけを招待したのはね、いおなに改めて謝りたいと思ったことと、ありがとうを言いたかったから」

「え?ひめはもう私に十分謝ってくれたわ。そのおかげで私はまたプリキュアに変身できるようになったし、みんなと仲間になって戦えた。ごめんなさいとありがとうを改めて言わなければいけないのは私の方だわ」

「ううん、やっぱりこれだけは言わせて。三年間、いおなから大好きなまりあさんを奪ってしまって、本当にごめんなさいっ!」

ひめは正座をして頭を下げた。

「本当にもういいのよ。お姉ちゃんもひめのこと全然恨んでない」

「それから、この間の『プリキュアウィークリー』での私の謝罪会見で、いおなとまりあさんは私を一生懸命かばってくれた。本当にありがとう」

「あの時は大変だったわね。でも、『かばった』というのはちょっと違うわよ。それに、お姉ちゃんと私だけじゃない。めぐみもゆうこも相楽くんも同席したし、それに、ゆうこがキュアラインで彼女が助けた世界中のプリキュアに連絡を取ってくれて、みんな駆けつけてくれた。特にハワイのオハナとオリナは真っ先に駆けつけてくれた。そして、私たちの正体を知っている増子さんも味方してくれた。世界的大ニュースにはなったけど、あんなに引っ込み思案だったひめが、一切言い訳せずに謝罪した。本当に頑張ったわね。ひめは本当に『勇気のプリキュア』の名に恥じない強いプリキュアになれたわね」

「ありがと。本当に強くなれたのかどうかはあまり自信がないけど、もしそうだとしたら、みんなのおかげだよ。それに私はブルースカイ王国の王女。将来は女王になるんだから、国の代表としていつかはしなくちゃならないことだったから」

いおなはそんなひめを見て急にいじらしく思えてきた。

(ひめはこれからもずっとこの『重荷』を背負っていかなくちゃならない。私がなんとか少しでも重荷を軽くしてあげられたら・・・でも、私はめぐみやゆうこみたいな愛情表現ができないし。少なくとも話題を変えなくちゃ)

いおなはそう思って、こう軽口をたたいた。

「いつもはお調子者のひめがしんみりしているのは、なんかこっちまで調子が狂っちゃうわ」

「ひどーい!せっかく人が真面目な話をしてるのに!」

ひめは手足をばたばたさせた。それを見て、いおなはちょっとからかってみたくなった。

「本当にひめは一国のお姫さまなの?たまに、というかいつもそれを疑っちゃうわ」

いおなはいたずらっぽく笑った。

「しょーしんしょーめーの、お・ひ・め・さ・ま!あんなことがなかったら、諸君は私と話ができないどころか、近づくことだってできなかったんだからね!頭が高ーい!」

「よかった。いつものひめに戻って。私はそんなお姫さまらしくないひめが好きよ」

「な、なんてこと言うのよ!照れるじゃないの!それに、あまりお姫さまらしくないことは少しは自覚してるし、直さなきゃいけないと少しは思ってるんだから・・・」

最後の言葉はしりすぼみになり、ひめは真っ赤になった。

「と、とにかく、いおなが話をそらしちゃったから、この話はもうおしまい!これからは、ふたりだけの『ないしょばなし』をしようよ」

「ないしょばなし?具体的にはどんな?」

いおなはひめに顔を近づけた。

「うーん、まずは、プリキュアのことから始めよっか。私、前から不思議に思ってたことがあってね。いおなは神様から『愛の結晶』を受け取っていないのに、プリキュアに変身できてたのよね?ずっとどうしてかなって思ってて。神様自身も不思議だったみたい。自分の知らないプリキュアが活躍してるって」

「結局プリキュアの話になっちゃうのね。まあ、いいわ。うん、今はひめのおかげで『フォーチュンピアノ』で変身しているけど、その前は『プリチェンミラー』で変身していたことは知っているわよね。『キュアテンダー』ことお姉ちゃんは、ゆうこみたいに世界中を飛び回って活躍していたプリキュアで、神様の信頼も厚かった。ひめが『アクシア』を開けてしまって幻影帝国が復活してしまったことなんかも、神様はお姉ちゃんに話していた。神様はプリキュアであることを自分の家族にも秘密にするよう言っていたみたいだけど、お姉ちゃんは家族に自分がプリキュアであることやそういう事情を打ち明けていた。でも、神様は何も言わなかったみたい」

「だから、いおなは私がアクシアを開けちゃった張本人だとか、私の長ったらしい本名を知ってたのね。私はフォーチュンからいつも『あなたのせいよ!』と言われていて悲しかったし、なんでそんな秘密を知っているのか分からなかった」

「あの頃は本当にごめんなさい。でも私は、そんな世界を守っている強くて優しいお姉ちゃんが大好きだったし憧れていたの。お姉ちゃんがプリキュアハンター・ファントムに封印されてしまった日は、世界中を飛び回って各地のプリキュアのサポートをしていた頃で、久しぶりに家に帰ってきていたの。嬉しかった私はお姉ちゃんと出かけて、その帰り道にファントムと出くわした。お姉ちゃんは私の目の前で変身して、私に物陰に隠れているように言った」

「でも、負けちゃったのよね・・・」

ひめの表情が曇った。しかし、いおなは悲しそうな表情を見せずに続けた。

「そう。初めは互角に戦っていた。だけど、卑怯にもファントムは、隠れていた私を見つけて、私を封印しようとした。それに気付いたお姉ちゃんは私をかばってくれたんだけど、その隙にファントムが攻撃して、お姉ちゃんはまともにそれをくらってダメージを受けて、変身が解けて封印されちゃったの」

「そういう事情だったなんて・・・いおなが私を恨んでも仕方がないわね。本当にごめんなさい」

「だから、もういいって。その時、ぐらさんが命がけでお姉ちゃんのプリチェンミラーを拾ってくれて、それを私に渡してくれた。その場は逃げ帰ったけれど、私は悲しくて仕方なかったし、それよりも何よりもお姉ちゃんのかたきを討ちたかった。だから、自分の部屋に戻ってから、プリチェンミラーに祈ったの、『私をプリキュアにしてください』って。そうしたら身体の中から不思議な力がわいてきて、お姉ちゃんがしていたように変身呪文を唱えたら本当に変身できちゃった。自分でもびっくりしたけど、ぐらさんがいちばんびっくりしていたみたい。それで、ぐらさんは私のパートナーになったの」

「その時って、小学五年生だったのよね。そんなに小さかったのに、強かったなんてすごごごーい!」

「でもひめは自分の国が侵略され始めた時からプリキュアやってるじゃない。日本で言うと四年生くらい?」

「それはそうだけど、戦うこと自体が怖かったから、自分の国を守れなかったし、こっちに逃げてきてからも、ちっとも勝てなくて、フォーチュンに助けてもらってばかりいたし。でも、その頃はフォーチュンに怒られてばっかりで、フォーチュンのことを『嫌な子』なんて思ってたけど」

「そのことは本当にごめんなさい。確かに初めのうちはあなたのことが憎かった。あなたのせいでお姉ちゃんが封印されたんだって。でもひめが、自分が引き起こしてしまった混乱を償おうと一生懸命戦っているのを見ているうちに、助けてあげたい、仲間になって一緒に戦いたい、と思うようになってきた。だけど、なかなか素直になれなかった。だから逆に、ひめに余計に辛くあたるようになっちゃった」

「そうだったんだ。いおなはやっぱり優しいし、か・わ・い・い♪」

「ば、バカ!なんてこと言うのよ!」

今度はいおなが真っ赤になった。

「でも私は、フォーチュンがなんだかんだ言っても助けてくれたことにはすごく感謝してるよ。それにフォーチュンは実際、『ぴかりが丘ナンバーワン』と言われるくらい強かったんだから」

「ありがとう。でも、私より強いプリキュアは世界中にたくさんいるわ。ただ、お姉ちゃんには今でもかなわないけれど、プリキュアになってから空手の稽古はそれまで以上に頑張ったことは確かね。だけど、プリキュアの力の源が『愛』なのに、私の場合はそうじゃなかった。幻影帝国への怒りはもちろんだけど、ひめにも恨みを持っていたから。だから、本当なら私はプリキュア失格で、変身すらできなかったはずなの。今考えると、そちらの方が不思議ね」

「それは、いおなが私を恨んでたとしても、まりあさんへの愛がそれよりも強かったから変身できたのよ、きっと。それに、さっきも言ったけど、フォーチュンはいつも私を助けに来てくれた。これも愛だよ」

「ありがとう。少し気持ちが楽になったわ。それに、私はひめにもっとありがとうを言わなくちゃならない。私がファントムに『プリキュア墓場』に連れてこられて封印されてしまいそうになった時、真っ先にあの空間に飛び込んできてくれたのがプリンセスだった。私はひめをさんざん無視してきたのに、どうして?」

「いおなが私の秘密をばらしちゃった後も、めぐみやゆうこは私のことを友達だって言ってくれた。その喜びを感じていたときに、ふっといおなのことが頭をよぎったの。フォーチュンは確かに強いけど、いつも一人で戦ってて、本当は昔の私と同じように怖いんじゃないかって。だから、めぐみとゆうこを仲間に誘ったんじゃないかって思ったら、いてもたってもいられなくなった。ちょうどその時に、ぐらさんがフォーチュンの急を知らせてくれた。プリキュア墓場には行けないと神様には言われたけれど、一生懸命祈ったら、奇跡的にあの空間に行くことができたの」

「あの時は変身も解けて、もうどうしようもなくて、絶望的になっていたわ。でも、プリンセスたちが駆け付けてくれて、すごく嬉しかった。それにひめは、一生懸命集めたプリカードを私に全部くれた。そのおかげで、私はまたプリキュアの力を得ることができた。本当にありがとう」

「いいのよ。それでも私のしたことは全部償えたとは思ってない。いおなや世界中の人たちから大切な人を奪ってしまった時間はどうやっても返ってこないもの」

いおなは、自分が思っているよりひめが傷ついていることを知って少し暗い顔になった。どう返したらいいか迷っているうちに、ひめの方から口を開いた。

「ところでさぁ、いおなは、私たちとは違うフォーチュンピアノで変身するじゃない?プリチェンミラーで変身してた時とどっちが気持ちいい?」

「な、なんてこと聞くのよ!」

いおなは不意を突かれて慌てたと同時に真っ赤になった。

「正直言うとね、私、変身する時、なんとも言えないくらい気持ちいいんだ。あの力が身体の中からわいてくる感じが。いおなが仲間になる前に、めぐみやゆうこにもちょっと聞いたことがあってね。二人とも言葉は違ったけど気持ちいいみたい。ゆうこはちょっとあれだけど。だから、いおなはどうなのかなって思って」

「この前の会見で、私たちが正真正銘の『ハピネスチャージプリキュア』だってことを証明するために、集まった皆さんの前で変身しなくちゃならなくて、すごく恥ずかしかったんだから!そんな恥ずかしいこと、答えられるわけないでしょ!」

「ふーん、『恥ずかしいこと』っていうくらいなんだ?正直に言っちゃいなよ」

「も、もう!分かったわよ!ここだけの話なんだからね。めぐみやゆうこには絶対言っちゃだめだからね!」

「うん、今はないしょばなしをしてるんだから、ここだけの話にするって約束するよ」

「ほんとにここだけの話よ。え、えっと、ミラーで変身していた頃は、幻影帝国への怒りとお姉ちゃんを絶対に取り戻してみせるという使命感だけで変身していたから、あんまりそういうことを感じる余裕もなかった・・・かな。で、でも、ひめのおかげでピアノを手に入れて初めて変身した時、仲間ができたっていう喜びからか、今までにないような力と・・・なんと言ったらいいかしら・・・そ、そうね、開放感と、高揚感を感じるようになった。そ、そういう意味では・・・ピアノで変身する方が・・・き、気持ちいいのかも・・・」

いおなは最後はうつむいて、もじもじしながら答えた。

「でしょでしょ~!フォームチェンジの時もイノセントフォーム発動の時も、それからプリカードを使った変装やドレスアップの時も、それぞれに気持ちがいいんだよね。これって『プリキュアの特権』だよね!」

「こらっ!そんなことを言うもんじゃないわよ!だいたい、あ・な・た・の・せ・い・で、世界中が混乱したから、『プリキュア』という存在が必要になったんだし、お姉ちゃんみたいに封印されちゃった人がたくさんいるんだからね!さっき反省したばっかりでしょ!ひめのいちばんダメなところは、そうやってすぐに調子に乗るところよ。まったくしょうがないんだから!」

「ご、ごめん。つい・・・。自分でも少しは自覚あるんだけど、これからは気をつけるようにするよ。ただ、本当はこれを話そうと思って振った話題だったんだけど、ちょっと話がそれちゃったんだ。本題は、結局のところ、『プリカード』ってなんだったんだろうねってこと」

ひめは皮肉っぽく笑った。

「そうね。カードを使っていろいろ変装したりおしゃれを楽しんだりはしたけれど、『プリカードがファイルいっぱいになると大いなる願いがかなう』ってことは、結局、私しか経験できなかった。だけど、その力を使わなくても、結果的にみんなの願いはかなったんじゃないかな。ひめは国を取り戻すことができたし、ゆうこの『世界中の人たちがごはんをおいしく食べられるようになりますように』という願いも戦いが終わったことでかなえられた。ただ、めぐみの願いだけはかなわなかった」

いおなは少ししんみりした口調になった。

「うん。おかあさんの病気は治らなかったもんね」

ひめも言葉を継いだ。

「その代わり、めぐみは『みんなの願い』をかなえてくれた。引っ込み思案な私を友達にしてくれたことで、ハピネスチャージプリキュアのチームだけじゃなく、学校やぴかりが丘の人たちみんなと仲良くするきっかけを作ってくれた。そしてミラージュさんと神様の仲を取り持って、最後にはレッドも地球も救うというビッグなビッグな願いもかなえてくれた。そういう意味ではめぐみ自身がプリカードだったのかもね」

「そうね。でもそれは分かるけれど、そんなみんなの願いをかなえてくれためぐみだからこそ、幸せになってほしい。めぐみは自分の幸せに無頓着なところがあるから、余計にそう思うわ」

「だけど、めぐみの幸せってなんだろう?神様には失恋しちゃったもんね」

「恋愛だけが幸せではないわよ。それに、そうだとしても相楽くんがそばにいるじゃない」

「あー、あの二人を見てると、じれったくて仕方ないのよね。めぐみも悪いけど、誠司はもっと悪い!」

ひめは語気を強めた。

「あらぁ?相楽くんにときめいちゃったことのあるひめが言えることかしら?」

いおながいたずらっぽく笑った。

「あ、あれは『吊り橋効果』だったのよ!私のく・ろ・れ・き・し!それに私の理想は『白馬に乗ったイケメンの王子様』なんだから!」

「はい、はい。まあでも、最近ときどき通学途中で抜けると思ったら、元ナマケルダの生瀬さんを起こしに行っているみたいだしね!」

「な、なんでそれを!」

ひめは慌てた。

「あんまりそんなことが続くから、この前、ぐらさんにこっそりひめの後をつけさせたの。そしたら、ひめが生瀬さんをたたき起している現場を押さえたってわけ」

「み、みんなは知ってるの?」

ひめはもうしどろもどろだ。

「ううん、今のところはぐらさんと私だけのひ・み・つ。リボンにも言ってないから安心して」

「ううー、いおなに弱みを握られたー!やばやばいよー!」

「どうして?生瀬さん、確かに頼りなさそうだけど、よく見ればなかなかイケメンじゃない。それに、『人形の国』に行った時にひめが一目ぼれした『ジーク王子』にも少し似ているわよね。でも、どうして生瀬さんを起こすようになったのよ?」

いおなはたたみかけた。

「そ、それは、神様からもらった『愛の結晶』を投げたら、増子さんに追いかけられていた生瀬さんに当たっちゃったからよ!結晶が当たった人と友達になるって決めてたから、前は敵だったかもしれないけど、友達になりたいと思ったの!でも、生瀬さんは、毎朝会社に遅刻するくらいだらしないから、しょうがないけど、毎朝起きているか確認して、起きてないみたいだったら起こしに行ってるのよ!」

「ぐらさんの話では『おひめちゃん、結構楽しそうだったぜ』って言ってたわよ。いっそのことブルースカイ王国に連れて帰ったら?」

「ああー!うるさいうるさい!生瀬さんを国王なんかにしたら、『めんどくさいですぞ』とか言って、国の政治をほっぽり出して、国が傾いちゃうわ!」

「あらぁ?私は『連れて帰ったら?』と言っただけで、別に『結婚したら?』なんて一言も言ってないわよ?」

「ボッ!」と音が出るくらい、ひめは真っ赤になってしまった。

「いおなはずるい!それに私と生瀬さんはまだそんな関係じゃない!この話はここでおしまい!そ、そんなことより、いおなの方はどうなのよ?」

「私の方って?」

「とぼけないで!海藤くんとはうまくいってるの?」

「裕哉くんとは・・・」

言いかけて、いおなは真っ赤になって、慌てて口を押さえた。

「ほほう、もう下の名前で呼び合っているのかね?いおなくん!」

ひめはにやりと笑った。

「ああもう!そうよ!下の名前で呼び合ってるわよ!悪い!?」

いおなはやぶれかぶれになった。

「別に悪くなんかないわよ。で、いおなの方からは告白したの?」

「ま、まだそんなところまでいってないわよ。裕哉くんとはいいお友達よ。好きだとかまだ分からないわ」

「またまたぁ。『そんなところまでいってない』って、もう十分海藤くんのことを意識してるじゃない」

今度はひめがたたみかけた。

「そ、そうかもしれないわね。ひめの言う通りかもしれない。それに裕哉くんは、私がイノセントフォームに目覚めるきっかけを作ってくれたから、とっても大切な人。私がプリキュアだったって分かってからも、今までのことをねぎらってくれて、しかも普通に接してくれてる。だから、高校も同じところに行けたらな、なんて思ってる」

いおなは急にしおらしくなった。

「まあ、いおなの気持ちは分かったわ。もうこれくらいにしてあげる。それに、このことはめぐみたちにも黙っててあげる。二人だけのひ・み・つ。その代わり、生瀬さんのこともめぐみたちにはしゃべらないで」

「分かったわ、約束する。あっ、でも、ゆうこは何か勘付いているみたいよ」

「なっ!ゆうこは何もかもお見通しなところがあるから、怖い時があるのよね」

「ほんとよね。でも、この話はもうおしまい。ねえ、一度ひめの国のことをゆっくり聞きたかったの。なんで、アクシアからシャイニングメイクドレッサーの力を引き出す時に、ひめが日本の神社のお神楽とそっくりな舞をしたのか、とか、そもそも何で日本のミラージュさんと別れた神様がブルースカイ王国にいて、アクシアがそこにあったのか、とかいろいろ知りたいことがいっぱいあるの」

いおなは目を輝かせて言った。

「よろしい。このひめ大先生が教えてしんぜよう。おっほん!」

ひめは咳払いして、プリチェンミラーにプリカードをセットすると、「せせせせせんせい・かわるんるん」という音声とまばゆい光とともに「先生」に変装した。そんな二人の夜は静かに、しかしにぎやかに更けていった。

<終わり>

【この作品について】

ブログに掲載した作品に大幅に加筆・修正したものです。主に加筆したところは、ええ、ゆうこのお話と同様に(以下略)。

いおなはひめをずっと憎んでいました。途中で仲間になりましたが、あの「お得よ!」回以外、あまり二人の直接的な会話のある話が少なかったので、やっぱりどこかお互いに遠慮していたところはあったと思っています。また、事情があったにしろ、ひめには「アクシアを開けてしまった」という厳然たる「罪」があります。例えばこれが現実世界であったなら、ひめは世界中から糾弾されるでしょう。でも、ここは「ハピネスチャージプリキュア」の世界。勇気を出して謝ったら、許してくれるような優しい世界であってほしいと思います。だから、二人のわだかまりを完全に解いてあげたくて、そして、ひめの「十字架」を解放してあげたいという思いで、このお話を書きました。

それから、前のお話のテーマである「ナマひめ」要素をこのお話にも入れていますが、私はこう考えています。公式の「設定資料集2」によると、ひめの両親は「国王」と「女王」となっていますが、これでは「王様が二人」ということになって現実ではありえません。ただ、父親である国王は母親である女王より「若い」という設定だそうで、多分、ブルースカイ王国の国家元首は女王の方で、しかも代々女系王族なのかもしれません。このお話で、ひめに「生瀬を国王にしたら」云々と言わせていますが、女系王族ならば、結婚すれば実際に国を司るのはひめで、生瀬は特に何もせずに一生暮らすことができるので、ちょうどいいのではないでしょうか。

「ハピネスチャージプリキュア!」アフターストーリー3改訂版【まったくしょうがないんだから!】 ― 白雪ひめ & 生瀬(ナマケルダ) ―

「今日も~ぴかりが丘は~いいお天気~♪ 明日も~あさっても~いい天気だと~いいな~♪」

「心の歌」を口ずさむめぐみを先頭に、ひめ、ゆうこ、いおな、誠司の五人と、リボン、ぐらさん、ファンファンの三匹の妖精は、いつもの通学路を学校へと向かう。

すると急にひめが立ち止まった。

「あ、ちょっと先に行ってて」

すると、ポケットからキュアラインを取り出して電話をかけた。そして何度かコールしたのち、電話を切った。

「あ~!また出ない!もうこの時間だとやばやばいよ~!」
「ひめ、どこに電話したの?それにこの時間ならまだ遅刻しないよ?」
「まったくしょうがないんだから!ちょっと用事を思い出したから、めぐみ、みんなと一緒に先に学校に行ってて!」

ひめはそう言うやいなや、もと来た道へ踵を返して走り出してしまった。

「ちょっと、用事って何?ひめ、本当に遅刻しちゃうよ!」
「大丈夫!私が足の速いこと知ってるでしょ!」

ひめはあっという間に視界から消えてしまった。

「ひめ、最近たまにこういうことがあるよね。それに忘れ物でもないみたいなのに、通学の途中で用事を思い出すって変だよ」
「うふふ、ひめちゃん、頑張ってるなぁ~♪」

「ゆうゆう、ひめのことなんか知ってるの?」
「ゆうこ、ひめのこと何か知ってるの?」
「大森、ひめのこと何か知ってるのか?」
「ゆうこ、ひめのこと何か知ってるんですの?」
「ゆうこ、おひめちゃんのこと何か知ってるのか?」
「キュアハニー、キュアプリンセスのこと何か知ってるのか?」

同時に三人と三匹がゆうこに同じことを質問した。

「女の子には一つや二つ、秘密があるものなのです♪今日もごはんがおいしくなりそう♪」
「なによ~、ゆうゆう!教えてくれたっていいじゃない!」

そんなことを言いながら、ひめを除いた4人と3匹は学校に向かった。

一方、ひめは、息を切らしながら、少し古ぼけたアパートの一室のドアの前にたどり着いた。そして息を整えると、呼び鈴を鳴らした。しかし反応がない。何度も鳴らすのだが、それでも反応はなかった。

「まったく、しょうがないんだから!」

しびれを切らしたひめは、ドアをドンドンと叩きながら、部屋の中へ向かって大きな声で呼びかけた。

「ナマケルダ!朝よ!まだ起きていないのは分かっているんだから!遅刻しても知らないわよ!」

するとしばらくして、ドタバタと物音がして、ガチャッとドアが開き、ぼさぼさの髪とシャツとパンツ姿の、かなり長身の男が出てきた。彼の名前は生瀬。彼はかつての「幻影帝国」の幹部「ナマケルダ」だった。

「うるさいですぞ、キュアプリンセス。それに私はもうナマケルダではないですぞ。その名前で呼ばれると、ご近所に白い目で見られるから、いい加減やめてくれませんか?」
「あ、ごめん、生瀬さん。でもこれだけは言わせて!またそんな格好で出てきて!私だって年頃の女の子なんだからね!それに、今はキュアプリンセスじゃないわよ!」
「ああ、そうでした。それでなんですか?こんなに朝早く?」
「朝早くじゃないわよ!もう何時だと思ってるの?会社に遅刻するわよ!」
「え?わっもうこんな時間!遅刻する!会社に行くのもめんどくさいですが、遅刻の言い訳を考えるのももっとめんどくさいですぞ!」
「だから、早く支度なさい。何度も私にこんなことさせるんじゃないわよ。まったくしょうがないんだから!」

生瀬は慌てて部屋に戻り、また何やらドタバタ物音がして、よれよれのワイシャツによれよれのネクタイ、よれよれの背広をひっかけて、部屋から出てきた。

「なんとか間に合いそうですぞ。ありがとう、キュアプリンセス」
「だ・か・ら、今はキュアプリンセスじゃないって。ひめって呼んでくれていいって言ってるでしょ」
「でも、あなたは一国のお姫さまじゃないですか。しかも私はあなたの国を侵略していましたし」
「それはもう終わったことでしょ。それにもう生瀬さんに恨みはないし」
「分かりました。では、ひめ、なんでこうほぼ毎日、私を起こしに来てくれるのですか?」
「それは、生瀬さんが心配だからよ」
「あなたに心配されることはないですぞ」

「それは、それは・・・・」

ひめは、少し口ごもった。

「あ、『愛の結晶』が生瀬さんに当たったからよ。ほ、ほら、生瀬さんが『プリキュアウィークリー』の増子さんに追いかけられた日のことを覚えてる?私、あの後、神様からもらった愛の結晶を高いところから投げたの!」
「ああ、そう言えば、何か当たったと思って足元を見たら、何か光るものを見つけて、拾いましたな。するとキュアプリンセスに変身したあなたが私の前に現れた。ただあの時は、戦いでもないのにあなたが変身していた上に、何にも言わずに、しかもなぜか顔が真っ赤になってすぐに飛び去っていったから、私もちんぷんかんぷんでしたぞ。あれはあなたが投げたものでしたか。でも、なんでそんな大事なものを投げたのです?」

「それは、それは・・・」

ひめは真っ赤になった。

「その結晶が当たった人と友達になるって決めてたから!そしたら、たまたま増子さんから逃げていた生瀬さんに当たっちゃったの!」
「私と友達になりたい、ということですかな?」
「そうよ、何度も言わせないでよ!それに、私たちが敵同士だった時には何度も戦ったし、私の成長を最後には認めてくれたから・・・」

ひめは、ますます真っ赤になってうつむいてしまった。しかし、もじもじしている自分をごまかすように大声を出した。

「ほらほら、会社に遅刻するわよ!それにそんなよれよれな格好をして!顔はまあまあイケメンなんだから、もっと服装に気をつけた方がいいわよ。まったくしょうがないんだから!」
「では、あなたに今度、コーディネートしてもらいますかな。あなたも急がないと遅刻しますぞ」
「う、うん。」

ひめは、ますますしおらしくなってしまった。

「それと、また私が遅刻しそうになったら、起こしに来てくれますかな?」
「わ、分かったわよ。でも、生瀬さんも大人なんだから、中学生に起こされるようなみっともないことから卒業した方がいいわよ。私も卒業したらブルースカイ王国に帰っちゃうんだからね。まったくしょうがないんだから!」

ひめは真っ赤になりながら、学校の方へ走りだした。

生瀬は彼女の背中を、ポケットから取り出した愛の結晶を透かして見送っていた。

「まったく、しょうがなく不器用なお姫さまですぞ」

<終わり>

【この作品について】

ブログに掲載した作品に加筆・修正したものです。この作品も、絵師さまが描かれた「ナマひめ」作品「しょうがないんだから」にインスピレーションを受けて書きました。カップリングとしての「ナマひめ」はいちばん「実現性が高い」組み合わせだと思います。ひめはナマケルダ(生瀬)と敵同士だった時も彼の口癖をよく真似ていましたし(元々は声を当てていらした潘めぐみさんのアドリブだったそうですが)、ナマケルダこと生瀬は「ビジュアル系バンド」を組んでいた、と自分で言ってしまうほどイケメンですから、ひめが放っておくことはできないんじゃないでしょうか。その辺の考察については、次の作品のあとがきで。

「ハピネスチャージプリキュア!」アフターストーリー2改訂版【私の秘密】 ― 大森ゆうこ ―

2015年2月7日 土曜日 晴れ

私の名前は「大森ゆうこ」です。・・・なんて、自分の日記なのに自己紹介を書くのもなんだか変ね。だけど、これまで起きたことの総まとめをしたいから、このまま続けることにしよう。

改めまして、私の名前は「大森ゆうこ」です。私のおうちは、お弁当屋さんの「おおもりご飯」。自慢になっちゃうけど、ぴかりが丘で大人気なんだ。毎日たくさんのおいしいお弁当を作るお父さんと、それを盛り付ける優しいお母さん、そしてお姉ちゃんと一緒に暮らしている。あ、今は妖精の「ファンファン」も一緒ね。

そして私にはもう一つの「姿」がある。私はプリキュア「キュアハニー」に変身できる。その証が、これを書いている机の隅に置いてある「プリチェンミラー」と「プリカード」。ほんの一カ月前くらいまで、私はハニーとして、私の親友であるめぐみちゃん(ラブリー)、ひめちゃん(プリンセス)、いおなちゃん(フォーチュン)と、「ハピネスチャージプリキュア」というチームを組んで、一緒に幻影帝国と戦っていた。

いろんなことがあったけれど、私たちは平和を取り戻すことができた。最終的には、めぐみちゃんがその「ビッグな愛」で、幻影帝国の黒幕だった「レッド」という神様を救った。そんなことができたのは、直接的にはめぐみちゃん自身が「フォーエバーラブリー」に変身してすごく強くなったからだけど、世界中のプリキュアや世界中の人たちの大きくて温かい祈りがあったからだということも忘れてはいけない。

でも、今日書こうとしていることは、これまでの戦いのことではなくて、ずっと私の心の中で秘めていること。家族はもちろん、めぐみちゃんたちや、私たちのプリキュア活動を支えてくれた相楽くん、私をプリキュアにしてくれた神様、そしてそこで眠っているファンファンにも言えないこと。まだそういう人たちに話すことはできないけれど、私自身が忘れないためにも、世界が幻影帝国の脅威から解き放たれた今だからこそ書きとどめておきたいと思う。

私は、みんな、特にめぐみちゃんから「ほんわかしていて癒し系だね」とたびたび言われる。もちろん、それを聞いてうれしくないわけではないけれど、「本当はそんな子じゃないの!」と叫びたくなることがある。その理由は、私がプリキュアに選ばれるずっとずっと前のことから話さなければならない。

めぐみちゃんと相楽くん、そして私は、物心つくかつかないくらい頃からの幼なじみ。めぐみちゃんと相楽くんは、おうちがお隣同士で、赤ちゃんの時から兄妹のように育った。私はあとからお友達になったのだけれど、そのきっかけは、めぐみちゃんと相楽くんのお母さんたちが二人を連れてお店に来た時。

私は小さい頃すごい人見知りだった。二人に初めて会った時も、お母さんの後ろに隠れてもじもじしていたのだけれど、めぐみちゃんが「ゆうこちゃん、一緒に遊ぼ!」と私の手を引っ張って、相楽くんと一緒に公園に連れて行ってくれた。そこでどんな遊びをしたのかはもう忘れてしまったけれど、このことだけははっきりと覚えている。

それからは三人でよく遊ぶようになった。ただ「遊ぶ」とは言っても、まずめぐみちゃんが何かに興味を持ったら真っ先にそれに飛びついて、相楽くんがそのめぐみちゃんの危なかっしい行動をフォローするということの繰り返し。私はそんな二人の積極性にはついていけなくて、いつも少し離れたところからそれを見ている感じだった。でも、それがつまらないということでは決してなくて、むしろそれだけで楽しかった。

そんな関係に少しずつ変化が起きてきたのは、今思い返すと、私たちが小学校に上がるちょっと前だと思う。めぐみちゃんのお母さんはもともと体が弱かったのだけれど、その頃少し具合が悪くなって、めぐみちゃんはお母さんのお手伝いが忙しくなった。すると、相楽くんが急に空手を始めた(後から分かったことだけど、その道場はいおなちゃんのおうち)。

理由を聞くと、「強くなってめぐみちゃんのことを守りたい」ということだった。その時はまだ、その意味はよく分からなかったけれど、この時から相楽くんはめぐみちゃんのことを意識し始めていたんだと思う。

それからは、三人で遊ぶ時間が少しずつ減っていった。それでも、三人で会える時は一緒に遊んだ。でも、どこか私は寂しさを感じていた。それである時、公園に犬が捨てられているのを見つけて、その子を飼いたいと思った。

でも、私のおうちは食べ物を扱うお店。お父さんとお母さんに相談したけれど、うんと言ってくれなかった。それに、その犬もなかなか私に心を開いてくれなかった。だからどうしても、お父さんとお母さんに認めてもらいたくて、そして、その犬になついてもらいたくて、一生懸命、その子のためにごはんを作って毎日公園に運んだ。お父さんとお母さんは、すぐにあきらめると思っていたみたいだけど、私は頑張った。

ある日、その犬は私のごはんをきれいに食べてくれた。私はとってもうれしかった。お父さんとお母さんも、事ここに至って、私が全部世話をすることを条件に、やっと飼うことを許してくれた。私は、その新しいお友達を「デビット」と名付けた。それからのデビットとの生活は、前に日記に書いていた通り。

私は、早起きしてデビットを散歩させるのが日課になった。すると、相楽くんも毎朝同じ時間にジョギングしていて、よく会うようになった。相楽くんは朝ごはんの前にジョギングをしているので、おなかがへっているみたいだった。私は「おなかのへった誠司くんに何か上げられるものはないかな?」とお母さんに相談した。

お母さんからは「はちみつを使ったキャンディなんかどう?」とアドバイスをもらった。はちみつは私の大好物だし、仲良しの相楽くんのために何かできるのが嬉しくなった。作り方はお母さんから教えてもらったのだけれど、子どもの私でもできるようなシンプルなものだった。それでも初めは焦がしてしまったり、熱いキャンディ生地にやけどしたりして失敗した。でも、何度か挑戦するうちに上手にできるようになった。

自分でも納得できるようなものができるようになったある朝、私はそのキャンディをいくつか持って、デビットの散歩に出かけた。すると同じ時間に相楽くんと会えた。

いつもは挨拶くらいですれ違う程度だけれど、その朝は相楽くんを呼びとめた。びっくりした相楽くんに、私は「いつもおなかがへっているでしょ?朝ごはんの邪魔にならない程度におなかの足しになるものを用意してきたの。ちなみに私の手作り」と言ってキャンディを差し出した。

相楽くんは私の手からキャンディを受け取ると口に入れて、「おいしい!ゆうこちゃんは料理が上手なんだね」とほめてくれた。そして、「これ、売り物になるよ。お店のお弁当のおまけとしてお客さんに上げれば、喜んでくれるんじゃないかな」とすごいアドバイスをくれた。

私は家に帰ると、そのことをお父さんとお母さんに喜んで話した。そうしたら二人ともそれに賛成してくれて、このキャンディをお弁当を買ってくれるお客さんへのおまけとすることにした。お客さんにもこのキャンディは好評だった。私は、デビットの散歩とお店のお手伝いのほかに、キャンディを作るのも日課になった。しかもキャンディは、お店の売り上げにも少しは貢献するくらいになった。

私は、そんなアドバイスをくれた相楽くんのことを、だんだん意識してきたことが自分でも分かった。小学校に上がってからは、はっきりとこれが「初恋」だということに気づいてしまった。相楽くんはカッコいいし、勉強も運動もできるし、誰にでも優しくて、ほかの女の子にも人気があったけれど、やっぱりめぐみちゃんだけにしか目になかった。だから、それだけに私の「片思い」はだんだん苦しくなってきた。

しばらくは、自分の思いを抱えたまま、何もないふりをして、相楽くんやめぐみちゃんと接していた。でも、学年が上がるたびに、周りのみんなもいろいろとそわそわしてくる。私も自分の思いを伝えたいという気持ちがどんどんつのっていった。

そして今から四年前、この年は一生忘れられないと思う。

四年生三学期のバレンタインデーの前日、私は相楽くんのためにチョコレートを作った。その前から相楽くんにはチョコはあげていたけれど、それは「友達」としてのもの。だからめぐみちゃんにも同じようにあげていた。でもその年は作る意味が違った。そして当日、私は自分の思いを伝えようと思って、放課後に相楽くんを呼びとめた。

相楽くんがもういろんな女の子からチョコをもらっていたことは知っていた。でも、自分の思いを込めて「誠司くん、あのね、私・・・」そう言って渡そうとした時、間が悪いことにめぐみちゃんが「何してるの?」と私たちのところに来てしまった。

相楽くんは「ゆうこからチョコをもらったんだ」とめぐみちゃんに答えた。めぐみちゃんは「ゆうゆうの作ったお菓子はおいしいんだよね。あれ?今年は私にはくれないの?」って悪びれずに私に尋ねた。私は慌てて、「めぐみちゃん、ごめんね。作ったんだけれど、持ってくるの忘れちゃったんだ。明日持ってくるね」と苦しまぎれの言い訳をした。

すると相楽くんは「めぐみにもちょっと分けてやるよ」と言って、半分にして渡してしまった。

相楽くんとめぐみちゃんに「悪意」があったわけじゃない。相楽くんはまだ私の「告白」を聞いていないし、たぶん、毎年のことのように普通に仲の良い友達からもらったチョコだという認識しかなかったはず。それと、めぐみちゃんは、あまり人を疑うことをしないし、それにこう言ってしまってはなんだけど、こういうことにはかなり鈍い。私が相楽くんに好意を持っていたなんて、気がついていたとは思えない。

二人とも私のチョコを「おいしい」と言ってくれた。それはうれしかった。でも、失恋したことが分かってショックだった。相楽くんの「いちばん」はめぐみちゃんであって、私じゃない。そのことは前々から分かってはいたけれど、その現実を改めて突き付けられて、その晩は一晩中泣き明かしたことを覚えている。

翌日からは、私は「誠司くん」と呼ぶのをやめて「相楽くん」と呼ぶことにした。相楽くんは初めはけげんな顔をしていたけれど、いつの間にか私のことを「大森」と呼ぶようになった。でも、この火種はずっと私の心の奥底にくすぶり続けていた。

それからほどなくして、追い打ちをかけるようにデビットが急に死んでしまった。失恋のショックと重なって、しばらくは大好きなごはんものどを通らなかった。

そんな頃世界は、しばらく前から始まっていた幻影帝国の侵略が激しさを増していた。それを救えるのは「プリキュア」という戦士たちだけなのだけれど、かなり劣勢だということをニュースで聞いていた。ニュースでは、幻影帝国によって多くの農地が荒らされてしまって、多くの人たちが食べるものにも困っている、ということも伝えていた。めぐみちゃんのお父さんがそういう人たちの援助のために海外に赴任したのもちょうどその頃だった。

私たちの住むぴかりが丘にも、だんだんと侵略の跡が目立つようになってきた。ぴかりが丘最強とうたわれていた「キュアテンダー」も行方不明になったと聞いた。私は、「早くこの混乱が収まって、世界中の人たちがおなかいっぱいごはんを食べられますように」とずっと強く願っていた。

そんな時だった。いつものように星に願いをかけていた私のところに、何か赤く光るものが落ちてきた。それは、すぐにプリチェンミラーとプリカードに形を変えた。私は自分が「プリキュアに選ばれたんだ」とすぐに悟った。すると、部屋の姿見の中から男の人が出てきた。もちろん私はびっくりした。

男の人は「ブルー」という地球の神様だった。神様は私がプリキュアに選ばれたことを告げて、こう言った。

「人間が生きていく上でいちばん重要なのは食べることだ。また、その食べ物は多くの人たちの愛によって作られる。君はそのことをよく知っているからプリキュアに選ばれた。そしてその食べ物を得るためには、大地の力が必要不可欠だ。大地の力はそのまま地球の力だ。だから、君のプリキュアとしての力も大きなものになるだろう」

私は自信がなかったけれど、早くプリキュアになりたいと思った。いろいろなショックを戦うことで吹き飛ばして忘れたかった。でも、神様はこう続けた。

「でも、今は君の心がかなり乱れているね。原因は僕には分からないけれど、すごく疲れているのは分かる。こんな状態で戦うのは危険だ。それにまだ君は小さい。キュアテンダーの行方が分からなくなったけれど、他の地域のプリキュアが助勢に来てくれていて、ぴかりが丘はとりあえず守られている。それに僕の知らないプリキュアが戦っているらしい。だから、君がもう少し成長して、今の心の乱れが落ち着いてきたら、その時はお願いしようと思う。それまではこれは僕が預かっておくよ」

そう言って、神様は私のプリチェンミラーとプリカードを持って、姿見の中へ帰って行った。後から分かったことだけれど、神様の知らないプリキュアとは、「キュアフォーチュン」こといおなちゃんだった。テンダーはいおなちゃんのお姉さんで、いおなちゃんは四年前に敗れてしまったお姉さんの力を引き継いでプリキュアになった。いおなちゃんとは同級生だから、私はこの時にはなれなかったけど、いおなちゃんも五年生の時からプリキュア活動をしていた計算になる。

そんなことがあってからは、デビットが死んでしまってからやめていた朝の散歩を、ジョギングとして再開した。プリキュアとして一度は選ばれたのだから、神様が次に私にお願いしてくるまで、もっと強くなっておきたかったから。そして、朝の一瞬でも、ジョギングする相楽くんと言葉を交わしたかったから。

それからあっという間に三年が経って、中学一年の三月頃のこと。プリキュアと幻影帝国の戦いは一進一退のこう着状態だった。ぴかりが丘はキュアフォーチュンがなんとか守っていてくれていた。それに、「キュアプリンセス」というプリキュアも戦っているけれどちっとも勝てないらしい、といううわさを聞いていた。後から分かったことだけれど、それがひめちゃんだった。

私は、ジョギングをして、おなかをへらして、ごはんをいっぱい食べて、お店のお手伝いをするという毎日を過ごしていた。めぐみちゃんと相楽くんの関係については、チクッと心が痛むこともあるけれど、昔のように二人のことを少し離れて見ることができるようになった。「今でも相楽くんのことは好き。でも私が好きな相楽くんがめぐみちゃんと両想いになれますように」と願えるようになっていた。

そんなある日、再び神様が私の前に現れた。神様はこう言った。

「君はあれから三年でずいぶんと成長した。今こそ君にプリキュアになってもらいたい。ぴかりが丘ではキュアプリンセスが戦っているが、彼女自身の内面の問題で勝てないでいる。プリンセスには一緒に戦ってくれるパートナーが必要で、彼女にはそれを探すように言うつもりだ。君には、プリンセスと彼女のパートナーのチームに入ってサポートしてほしい。また戦闘だけじゃなく、個人的な相談にも乗ってやってほしい」

私は承諾して、プリチェンミラーとプリカードを神様から受け取った。そして、神様に促されて変身してみた。プリキュアとしての私の名前は私の大好きなはちみつから「キュアハニー」と決めていた。

初めての変身。覚悟を決めてミラーを開くと、目の前がパアーッと明るくなって、黄色く輝く不思議な空間が広がる。ミラーから「かわるんるん」と声がする。ミラーに映る私はまだ「大森ゆうこ」。でも、身体は既に黄色い光に包まれていて「プリキュア」に変わる準備はできているし、自分の気持ちも「素敵なプリキュアに変わりたい!変わるの!変われる!変わってみせる!・・・ああ・・変わっていく・・・!」という高揚感と開放感にあふれてくる。それと同時に不思議な力が身体の内側からみなぎってきて、ほてってくる。そのせつな、私のショートの髪が急激に長く伸びて黄色いポニーテールになる。この時点の私は「大森ゆうこ」じゃない、でもまだ「キュアハニー」でもない、とっても不思議な感覚。ほかの人には絶対内緒だけど(これはほかのメンバーにも言えない)、この変身呪文を唱えるまでの、言うならば「ハニーになりかけている」状態は、何と言ったらいいのか・・・うん、すごく気持ちいい!

そして、その気持ちよさにうっとりしそうになるのを何とかこらえながら(みんなと一緒に変身するようになったら、お互いの力が影響し合ってもっと気持ちよくなって、それを押し隠すのが大変だった)、カードをセットして「プリキュア!くるりんミラーチェンジ!」と叫んだ。明るい不思議な空間の中で、私は誰に教えられたわけでもないのに、プリキュアの力(コスチューム)を全身にまとうために、身体が勝手に動いて踊るように変身していく。身体は勝手に動くけれど、変身中はわりと意識はしっかりしている。だから、結構恥ずかしい格好やアクションをしていることも分かるのだけれど、そんなことが気にならないくらい気持ちが高ぶっていく。

その気持ちよさと高揚感が最高潮に達した時、手からバトンが生み出されて、変身が完了した。名乗りは「大地に実る命の光!」。そして、その高揚感の余韻が冷めやらないうちに、また身体が勝手に動いて、私は自分の新たな名前を叫んだ。「キュアハニー!」と。

すべてが終わった後、私は高ぶった気持ちと恥ずかしい気持ちが自分の中にうずまいてもだえそうになるのを必死にこらえながら、自分の姿を姿見に映してみた。そこには、私の知っている「大森ゆうこ」とは全く違う姿の人物が映っていた。私はプリキュアに変身した、変身できたことを改めて認識した。

変身中に気がついていたことではあるのだけれど、私にはほかのプリキュアとは違う特徴がある。普通のプリキュアはみんな左手に「ラブプリブレス」をしていて、それをたたいていろいろな技を出す。でも私にはそれがない。代わりにバトンを持っている。神様もそれには驚いたみたい。ただ、「ほかのプリキュアよりも強力な技が出せそうだね」と言ってくれた。その後、フォーチュンが「フォーチュンタンバリン」を持つことになったから、私のバトンと彼女のタンバリンが、私たち「ハピネスチャージプリキュア」のちょっとしたシンボルになった。

それに、自分でも信じられないくらい、気持ちが前向きになって明るい気分になっている。めぐみちゃんにも言われたことがある。「ゆうゆうはハニーに変身すると、すごく明るくなるね」って。多分、自分の中の「変わりたい。いつまでもくすぶってしまうような、こんなうじうじした性格からさよならしたい!」という気持ちが原動力になっているのだと思う。

それから、ふだんの私は、めぐみちゃんのように大声で歌うことはほとんどない。でも、ハニーにはテーマ曲「しあわせごはん愛のうた」がある。これはやっぱり私がハニーに変身して明るい気持ちになれるからこそ歌える曲。

この曲は、めぐみちゃんたちと一緒に戦うようになる前に何度か変身しているうちに、曲のイメージや歌詞が断片的に浮かんできていたのをまとめたもの。でも、部屋で「ゆうこ」の姿のままで考えていても全然まとまらなかったから、お姉ちゃんが部屋にいない時を見計らってこっそり変身して、その高ぶった気持ちを利用して、少しずつまとめていった。この時はまだ家族には自分がプリキュアだってことを内緒にしていたから、お姉ちゃんが部屋に入ってくる気配がしたら、慌てて変身を解いて、普通に勉強をしていたようなふりをしていたのだけれど、変身した時の気持ちの高ぶりがしばらく続いてしまって、それをお姉ちゃんに悟られないように抑えるのが大変だった。

神様からは自分がプリキュアであることは家族にも秘密にしておくようにと言われていた。でも私は、「しあわせごはん愛のうた」が完成したらすぐに家族に話してしまった。もちろんそれだけでは信じてもらえないから、家族の前で変身してみせた。私には「お店のお手伝いをする」という自分でもおろそかにしたくない大切な役割がある。私がプリキュア活動をすることで、その分家族には迷惑をかけるからだ。もちろん家族は驚いて、そんな危険なことをするなんて、と反対した。でも私は、「ごはんを食べるみんなの笑顔を守るために戦いたいの。これは私の大事な使命だと思っているから」と言って説得した。

そうは言っても、もともと私は争い事は嫌いだし、積極的に戦いをしかけるような性格でもない。だからしばらくは、お店の近くで戦闘があった時に、お店を守るためだけにこっそりと変身して戦っていた。

そんな時に、またお店の近くで戦闘があった。私がいつものように物陰に隠れて変身しようとしたら、お客さんたちが避難したお店の前で変身しようとしている二人の姿を見つけた。それがキュアラブリーことめぐみちゃんとキュアプリンセスことひめちゃんのコンビ、「ハピネスチャージプリキュア」だった。

私はプリンセスがひめちゃんだってことは知っていたけど、彼女のパートナーにめぐみちゃんが選ばれたことを知ってうれしかった。本当はすぐにでも仲間になりたかったけれど、なかなか言い出せなかった。神様にも打ち明けるタイミングを相談したけれど、「ゆうこが言い出せるタイミングはきっと来る。焦らなくてもいい」と言われてしまった。

ラブリーとプリンセスの「ハピネスチャージプリキュア」は、しばらくは快進撃を続けていた。でも、二人のことは気になって仕方がなかったから、いつも二人の後をこっそりつけていて、戦闘が始まるといつでも助けられるように変身して隠れて見守っていた。

私がハニーとしてラブリーとプリンセスの前に現れたのは、相楽くんの通う空手道場、つまりいおなちゃんのおうちが、サイアークに襲われた時。ラブリーとプリンセスがピンチになったし、何と言っても、相楽くんを助けたかったから。その時は「しあわせごはん愛のうた」を歌って帰っただけだけれど、翌日、学校中でこの歌がはやったのがきっかけになって、やっとめぐみちゃんとひめちゃんに私がハニーだということを打ち明けることができた。

仲間になってから起きたことは、これまでに日記に書いてきたとおり。苦しい戦いも多かったけれど、仲間と過ごす毎日がこれまで以上に楽しくなったことだけは確かだって言える。だから今日は、今まであまり書いてこなかったことを少し付け加えようと思う。

ハピネスチャージプリキュアがキュアフォーチュンこといおなちゃんを仲間に迎えて、ますます強くなっていった頃から、私は神様から世界中のプリキュアのサポートと相談に乗ってやってほしいと言われることが多くなった。「プリキュアにはかなり強い精神力が必要だ。負け続けているプリキュアには何か理由があるはずだから、話を聞いてやってほしい」ということだった。

プリキュアには神様から二つの厳しい「おきて」を言いつけられている。一つは、私が早々に破ってしまった、自分がプリキュアであることを秘密にすること。もう一つは「恋愛をしてはならない」ということだった。

「恋愛禁止」というおきては、神様自身の辛い思い出から生まれたもの。でもそれはかなり後になってから分かったことだし、しかも直接的には私たちハピネスチャージプリキュアしか知らなかったこと。

すべて終わった今だから話せることだけれど、相談に乗ったプリキュアの悩みのほとんどは、「プリキュア活動」と「恋愛禁止」のはざまで苦しんでいることだった。つまり、「自分の友達はみんな恋をしているのに私だけできない。私だって好きな人がいる。恋をしたい」と悩んでいた。

プリキュアだって一人の女の子。それにみんな年頃だし、恋をしたいと思うことはごくごく自然なこと。そんな気持ちを押し隠しせば、気持ちが不安定になって戦いに集中できなくなることは当然だと思う。

だから私は自分の経験を話した。「失恋はしたけれど、私の中には相楽くんのことを今でも思い続けている自分がいる。でも、その人を守りたいという気持ちが自分を強くしてくれている。そもそもプリキュアの力は『強い愛』から生まれるものだから、今はそういう状況ではないかもしれないけれど、ある人を好きになったりする気持ちは押し殺さなくてもいい。だから、そういう気持ちをかなえるためにも、早くこの幻影帝国との戦いを終わらそう」ってアドバイスをした。神様は見ていたかもしれないけど、その後に特に何も言われなかったから大丈夫だと思った。それに、一進一退だった幻影帝国との戦いがだんだんプリキュア側に優勢になっていったのも、手前みそにはなるけど、私がサポートと相談に乗るようになってからだと思う。

それからいくつかの戦いを経て、私たちは「イノセントフォーム」にも目覚め、ついに私たちはミラージュさんを解放した。ミラージュさんは神様への愛が忘れられなかったことを「レッド」という神様に付け込まれて、世界の侵略なんていうことをしちゃったけれど、三百年経ってやっと、お互いの気持ちが結ばれた。そして、今度はそのレッドという神様と戦うことになった。

でもその前に相楽くんがレッドさんに操られてしまった。私は失恋した時以上にショックだった。ただ、相楽くんがそうなってしまったのは、めぐみちゃんを守りたかったのに逆に今は守られている、という焦りがあったから。でも、私たちも相楽くんがいろいろと助けてくれていたことに甘えていた。人は、支え、支えられているという大事なことを忘れてしまっていたのは、人の幸せを願う「ハピネスチャージプリキュア」を名乗るには、失格だと言われても仕方がない。

でも、だからこそ、めぐみちゃんは相楽くんと真剣に向き合った。だから洗脳から解放することができた。私はちょっと嫉妬したけれど、もうその時には、自分の気持ちのうずきはなくなっていた。

レッドさんとの戦いは苦戦して、私自身も一度は封印されてしまった。めぐみちゃんも封印されそうになったけれど、それを相楽くんがかばったみたい。そのおかげでめぐみちゃんは「フォーエバーラブリー」になった。その姿は本当に神々しくて愛にあふれていた。そして、その大いなる愛でレッドさんの苦しみを解放することができた。

すべてが終わった後、私たちは神様から新しい「愛の結晶」をもらった。相楽くんとめぐみちゃんは、大切な人ができたらその人に渡す、と言っていたけど、もうあのアイコンタクトを見れば、お互いがお互いを大切に思い始めていることは一目りょう然。私自身も、自分の気持ちをごまかすために二人を応援しなくても、もう大丈夫だと思った。

私が愛の結晶を渡したいのは、一緒にごはんを食べたいと思えるような人だけど、まだそういう人は現れていない。でも、新しく私のそばにいてくれる「人」ができた。正確には「妖精」。かつて「プリキュアハンター・ファントム」として恐れられていた「ファンファン」だ。ファンファンはもともとのパートナーだったミラージュさんの元を離れて地球に残った。私にはパートナーの妖精がいなかったのでとてもうれしい。

私は家族にファンファンを紹介した。しかも、ファンファンはなぜか人間の姿になれる力が残っている。お父さんには警戒されているけれど、料理を教えてもらったりして、仲が悪いわけではないみたい。妖精の姿の時は、いつも私の頭の上に乗っている。甘えん坊さんなんだね。あのこわもてだったファントムだったなんて想像できないよ。

ファンファンは「いつかゆうこに『おいしい』と言ってもらえる料理を作る」と意気込んでいる。まだ手元がおぼつかないところがあるけど、きっと上手になるよ。そうしたら私にごちそうしてね。待ってるよ。

<終わり>

【この作品について】

ブログに掲載した作品に加筆・修正したものです。元々は自分の個人的な都合で二日分の日記ということにしていましたが、一本にまとめました。でも大幅な加筆の結果、日記にしては長すぎるものになってしまいました。

ハピプリでは、めぐみと同じくらいゆうゆうが好きでした。四人の中で「保護者」的な立ち回りをする役割でしたが、どうしてあの年齢であそこまで「達観」できるのか不思議でした。また、「癒し系」と公式で紹介されているわりには、「秘密・ミステリアス」な部分が多すぎて、今一つつかみどころのないキャラでもありました。でも、失恋経験があると言う衝撃的な告白が本編であってから、何か打ち明けたくても打ち明けられないような「悲しみ」をどこか抱えているのではないか、という思いが私の中でずっとくすぶっていました。結局、本編では何も語られませんでした。その代わりと言っては何ですが、最終回で、めぐみと誠司を一瞥してから去っていくゆうゆうの姿に、いろいろな想像(&妄想)が膨らんだ結果生まれたのがこの作品です。

大幅に加筆した部分は、ゆうゆうが初めて変身した時のことを振り返っている箇所です。ええ、私の「フェティシズム」が「てんこ盛り」です。でも、食べることが大好きで、いおなとはまた違ったベクトルで健康的なゆうゆうなら、そういうふうに「敏感に」感じることもあると思うのです。・・・はい、言い訳です。ごめんなさい。

「ハピネスチャージプリキュア!」アフターストーリー1改訂版【わたしだけのかみさま】 ― レッド & 愛乃めぐみ ―

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俺はレッド。一応、「惑星レッド」という星を守護する精霊だ。人間には「神」とも呼ばれる。

惑星レッドは遠い過去には栄えていたが滅んでしまった。俺には「ブルー」という弟がいて、彼は「地球」を守護しているが、その地球の繁栄と「美しさ」に俺は次第に嫉妬し、「過ち」を犯してしまった。弟の「恋人」を操って地球を侵略し、さらには滅ぼそうとしたのだ。

ブルーはそれに対抗するために、その「愛」で世界中にプリキュアを誕生させ、俺が操る彼の恋人だった「クイーンミラージュ」の率いる「幻影帝国」と戦わせた。その戦いは一進一退だった。

世界中に数多あるプリキュアチームの中で最強だったのが「ハピネスチャージプリキュア」だった。その中心にいたのが「キュアラブリー」こと「愛乃めぐみ」という少女。俺が最も忌み嫌った「愛」の名前を頂くプリキュアだ。

ミラージュは俺が何度洗脳しようと試みても、ブルーのことを完全には諦め切れていなかった。ハピネスチャージプリキュアが幻影帝国に最終決戦を挑んだ時に、そこに真っ先に気づいたのがラブリーだった。ラブリーことめぐみは、ブルーに恋心を抱いていたようだが、ミラージュとブルーはお互いがお互いを必要としているということに気づいて、ミラージュを俺の洗脳から解き放ってしまった。

俺は焦った。しかし、同時にめぐみのことにも興味を持ち始めた。

めぐみは自分の幸せよりも、他人の幸せの方を極端に優先する傾向があった。だから、ミラージュとブルーが元の鞘に収まった時、彼女は喜びはしたが、数々の戦いの中で、彼女の中の何かが変わりつつあった。彼女は自分が「失恋」したことに気づいて、その感情の動き自体が初めての体験であり、それを制御できなくなっていた。俺はそこに付け入ることにした。

初めは彼女自身をミラージュのように操ろうとしたが、予想以上の意志の強さによりそれは失敗した。それは、彼女には幼馴染の「誠司」という心の支えがあったからだ。めぐみ自身は気づいていないようだったが、誠司は確実に幼馴染という関係を越えて、めぐみを愛している。俺は誠司の、めぐみを守りたくても守れない、自分の思いに気づいてくれない、という焦りを利用して、彼を操ることにした。

しかし、その計略もめぐみの「愛」の前に結果的に失敗に終わった。俺は自暴自棄になって、惑星レッドを地球にぶつけて、ともに滅びようという作戦に出た。

一方で、あれだけ「愛」を忌み嫌っていたはずの俺が本当に渇望していたのは「愛」だった、ということに気づかされつつあった。それを体現しているのは、他でもないラブリーことめぐみだった。だから俺は、ラブリーに「俺を愛せ」と率直に告白した。

ラブリーは、俺のこんな歪んだ愛の形をも受け入れるような「フォーエバーラブリー」に進化した。その後の戦いは、自分でも敗れるということは分かっていた。しかし、しばらくは彼女と拳を交えながらも、語り合いたいと思った。こんな俺でも愛してくれる人間がいることが単純に嬉しかったのだ。結果的に俺は敗れて、惑星レッドも地球も救われた。

前置きが長くなってしまった。ラブリーことめぐみとの最終決戦の後、俺は、弟であるブルーと、彼の恋人(もう妻と言ってよい)ミラージュとともに、惑星レッドの復興に取り組んでいる。一度荒廃してしまった星を復興させるのはいばらの道だ。あと何百年、何千年、何万年かかるか分からない。時々絶望感に襲われることもある。そういう時に思い出すのが、めぐみの「愛」だ。

俺や弟は、鏡を使うことによって、自分の守護する星の様子を観察したり、行きたい場所へ移動することができる。復興に必要なものを地球から調達するために、その「力」をたびたび使うことがある。それ以外にも、俺のような「神」が、その力を使って、年頃の女の子の様子を観察するのは、本当は良いことではないことは分かっているが、めぐみのことが恋しくなった時には、彼女の様子を鏡を通して見ることがある。

めぐみは仲間と元気に暮らしているようだ。誠司のこともだんだんと意識し始めていることが分かる。それだけに、俺のめぐみへの思いも募っていくのだった。

めぐみと直接会って話がしたい。一度会えば、少しは自分の気持ちを鎮めることができる。連日の復興作業の疲れに加え、ブルー夫婦が自分の前で「いちゃついている」のも食傷気味だ。決めた。

今日は休日だし、めぐみが自分の部屋にいることは分かっていた。でも、いきなり現れるのは失礼だ。だから、鏡を通して呼びかけてみた。

「めぐみ、めぐみ」
「え、誰?どこから私を呼んでいるの?」
「ここだ。お前の部屋の姿見から呼んでいる」
「あっ、レッド!久しぶり!元気だった?今日はどうしたの?」

彼女はあの人懐っこい笑顔で次々と俺に質問をぶつけて来る。それだけでも俺は嬉しかったが、こっちに来いとは言ってくれない。当たり前だ。相手は年頃の女の子。男を簡単に部屋に入れることはできない。仕方がないので、こちらから申し出た。

「あ、あのな、めぐみ。言いにくいんだが、今からそっちへ行ってもいいか?」
「え、私と会いたかったの?だったら早く言ってくれればいいのに。遠慮しないでこっちにおいでよ。私だって直接会って話をしたいよ」
「本当にいいのか?普通の年頃の女の子は警戒するものだぞ」
「え?レッドに変な下心があるとは思えないよ。確かに悪いことをしたかもしれないけど、私はレッドがそんな悪人じゃないことを知ってる。だからおいでよ」

そんなことを言われて、「下心」のある俺は恥ずかしくなった。促されるまま俺は彼女の部屋の中へ入った。

「本当に久しぶりだね、レッド。鏡を通して見るより元気そうでよかった。また会えて本当に嬉しいよ。あ、立って話しているのもなんだから、ちょっとちらかっているけど、その辺に座って。あまりお構いできないけど、今、お茶とお菓子を持ってくるから」
「いや、お構いなく」

俺が言い終わるか終らないうちに、彼女はキッチンへ走って行った。

その間に、彼女の部屋の中を眺めてみる。女の子らしいと言えばそうだが、割りとこざっぱりした感じだ。すると、机の片隅に、ピンクの光るものを見つけた。思わず手に取ってしまった。それは、最終決戦の後、ブルーがハピネスチャージプリキュアの仲間たちに渡した「愛の結晶」だった。

めぐみは確か、自分に大切な人ができたらこれをあげる、と誠司に言っていた。誠司もそれに同意した。誠司にはめぐみが大切なのは明白だから、誠司はめぐみと交換したいと思っているはずだが、めぐみからそれを言いだすまで、まだ関係は進んでいないらしい。少しホッとすると同時に、そんなことを思った自分自身に驚いた。

「あ、レッド、それ」

キッチンから戻ってきためぐみが、慌てた様子で声をかける。はっと我に返る。

「す、すまない。これはブルーがめぐみたちに与えたものだろう?」
「そう、私の宝物。私がプリキュアだったことは、苦しいこともあったけど、大切な思い出。辛いことがあるとこれを見て、プリキュアだった私に乗り越えられない困難はないって、自分を奮い立たせることができるんだ」
「そうか」

その「思い出」の中には、ブルーへの恋も含まれているのだろうか。

「でも、そんなことに頼らなくてもいいくらい、私に誰か大切な人ができたら、その人にあげるんだ。でも、まだ本当に『大切』な人が誰かはまだ分からないんだ」
「そうか。そういう人が早く現れるといいな」

俺はめぐみの大切な人が誠司であることは分かっている。でも、そんなことを言うのは野暮だ。また、できればそれまでの時間が長くあって欲しいと、どこかで思っている。

「さあ、座って座って。惑星レッドのことをもっと聞かせて」

座るやいなや、めぐみは胡坐をかいた俺の膝の間に座って、もたれかかってきた。俺は少し慌てた。

「お、おい。無防備すぎるんじゃないか?」
「言ったでしょ、レッドに変な下心があるなんて思っていないって。それに、私は一人っ子だし、お父さんもほとんど家にいないから、あまりこうしてもらったことがないんだ。レッドは、私にとってお兄さんみたいなものだから、ちょっと甘えさせてよ」

それから、俺とめぐみはいろいろな話をした。でも、話したことを良く覚えていない。俺はめぐみの体温をじかに感じ、どこか上の空だった。

ただ、めぐみの顔を見ると、うっすらと目に隈ができているのに気付いた。それに少し眠そうだった。

「めぐみ、なんだか眠そうだけど、大丈夫か?目に隈ができている」
「あ、分かっちゃった?女の子なのに恥ずかしいよ。あのね、私たちもう受験生でしょ?ひめはブルースカイ王国に帰っちゃうみたいで寂しいけど、誠司とゆうゆうといおなちゃんは同じ高校を目指しているみたいで、私も一緒にそこへ入りたいんだ。だけど、プリキュアしてた時に、ブルーにも叱られたけど、私の成績は学年の下から数えた方が早いの。だから今、その分勉強を頑張らなくちゃいけなくて、毎晩遅くまで誠司と一緒に勉強してる。って言うか、一方的に私が教えられているんだけどね。誠司は教え方は上手いんだけど、なかなか厳しくて」

やっぱり誠司のことが大切なんだな、と俺はちょっと嫉妬した。するとめぐみは、ちょっとウトウトし始めた。

「おい、ちゃんとベッドで寝た方がいいんじゃないか?風邪をひくぞ。俺も帰るから」
「ううん、大丈夫だよ。久しぶりに会ったんだから、もうちょっとゆっくりしていってよ」

そう言い終わるやいなや、めぐみはすーっと寝息を立てて、俺の膝の間で眠ってしまった。

「おい、めぐみ、起きろ。ちゃんとベッドで寝なきゃ」
「うーん、もう少し、こうさせていて、お兄ちゃん。ううん、わたしだけのかみさま・・・」

寝言だが、そんなことを言われて、俺はドキッとした。そして、帰るタイミングを逃してしまった。まあいいか、誠司がここに来るまで、こうさせてもらおうか。

<終わり>

【この作品について】

以前掲載した作品に加筆・修正したものです。でも、この後のアフターストーリー2から4に比べて、それほど手を入れていません。私がこの作品を書こうと思ったのは、ツイッターでお世話になっていて、アンソロにも寄稿されている絵師さまの同名のイラストを見たことがきっかけでした。レッドの膝の間にちょこんと座って居眠りをしているめぐみと、どうしていいのか困り顔のレッドの表情が本当にかわいくて、それに刺激を受けたのでした。その時のイラストは単色でしたが、この作品を読んで下さった絵師さまが、フルカラーに仕上げて、私のブログに掲載することまで許可して下さいました。私を「レドめぐ」の世界に引っ張り込んだきっかけはこの絵師さまだと断言できます(笑)。

プリキュアオンリーイベント「レインボーフレーバー13」のアンソロ企画に参加しました

丸々3か月ブログを放置しておりました。プリキュアも継続して見ておりますし、夏アニメも何本か見ています。昨日は9月19日から公開された「心が・・・」(感想とか見ようとする方の検索に引っかかるので以下略)も鑑賞して、いたく感動しました。それらについては後日機会があれば何か書こうと思います。

この3か月ですが、8月以降はまあ持ち直したものの、あまり安定しているとは言えない状態でした。それでも、何とか頑張ろうと思ったのが、題名のことです。

10月4日(日)に蒲田の「大田区産業プラザPIO」で開催される「レインボーフレーバー13」に、キュアリュータさん(@cureryuta)が主宰する「ハピネスチャージプリキュア!」のアンソロジー企画に参加しました。

きっかけは、3月にここに掲載し、6月に素敵な挿絵を頂いた「わたしだけのかみさま」です。その後、いくつかのお話をここで発表しています。

初めはこれらを加筆修正して再掲載するつもりで手を挙げました。しかし、主宰のリュータさんの「ぜひとも書き下ろしを」という要請から、今までのお話の加筆修正に加えて、書き下ろしをすることになりました。7月の1ヶ月は、帰宅後や休日に、調子が悪いなりに、少しずつ原稿を進め、8月の夏休み前には書きあげることができました。

しかし、B5原稿で50ページという量になってしまったため、リュータさんから「書き下ろしのみにして下さい」というご指示があり、書き下ろしだけの原稿に修正(それでも14ページ)・再提出の上、リュータさんのチェックを受けて脱稿しました。

今まで同人誌は買い集めることだけに楽しみを感じていました。でも、今回ほんのわずかですが作る側で参加することができ、原稿を完成させるのは苦しかったですが、非常に楽しかったです。

このアンソロには最終的には約70名という非常に多数の方の参加を得て、200ページを超える「本」となったそうです。

これが実際に形になったものを見るのが今から楽しみで仕方がありません。多数の「ハピネスゾンビ」の方々のそれぞれの「ハピネス愛」を存分に味わいたいです。

サークル名は「土偶戦車ストーム」、スペースは「い22」、アンソロの題名は「虹色ハピネス」です。このアンソロの中で、私は「「ハピネスチャージプリキュア!」アフターストーリー5 【私の大切な仲間たち】 ― 愛乃めぐみ」という題名で発表しています。

それでは「1~4」はどうなっているのか、となりますが、それらは最終原稿から削ったお話です。「5」の世界観と統一するためにかなり修正していますので、これからここで掲載していく予定です。しかも原稿に、ここに載せた、と書いてしまったので後に引けない(汗)。

最後に、このような創作のきっかけを作って下さった絵師さま、主宰のキュアルータさまに、お礼を申し上げます。

<追伸>

当日は一般参加する予定です。リュータさんはじめアンソロに参加された方々、そのほかツイッターでお世話になっていてサークル参加されている方々にお会いできるのを楽しみにしています。

2015年6月26日 (金)

【再掲】わたしだけのかみさま(「ハピネスチャージプリキュア!」アフターストーリー)



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【再掲:2015/6/26】

このお話を作るきっかけになったイラストを、この絵師さんがブラッシュアップして下さり、しかも掲載を許可して下さいました。ここで改めてお礼を申し上げます。ああ、めぐみちゃんとちょっと困った顔のレッド様が可愛い!

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ツイッターでお世話になっている絵師さんが、レッドとめぐみの素敵なイラストを先日掲載しました。それに触発されて、このお話を書きました。上手にまとまっていませんが、よろしければお付き合いください。

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「わたしだけのかみさま」

俺はレッド。一応、「惑星レッド」という星を守護する精霊だ。人間には「神」と呼ばれる存在。

惑星レッドは遠い過去には栄えていたが滅んでしまった。俺には「ブルー」という弟がいて、彼は「地球」を守護しているが、その地球の繁栄と「美しさ」に俺は次第に嫉妬し、「過ち」を犯してしまった。弟の「恋人」を操って、地球を侵略し、さらには滅ぼそうとしたのだ。

ブルーはその「愛」で世界中にプリキュアを誕生させ、俺が操った「恋人」であるミラージュの率いる幻影帝国と戦わせた。その戦いは一進一退だった。

世界のプリキュアの中で最強だったのが「ハピネスチャージプリキュア」だった。その中心にいたのが「キュアラブリー」こと「愛乃めぐみ」という少女。俺が最も忌み嫌った「愛」の名前を頂くプリキュアだ。

ミラージュは俺が何度洗脳しようと試みても、ブルーのことを完全には諦め切れていなかった。ハピネスチャージプリキュアが幻影帝国に最終決戦を挑んだ時に、そこに真っ先に気づいたのがラブリーだった。ラブリーことめぐみは、ブルーに恋心を抱いていたようだが、ミラージュとブルーはお互いがお互いを必要としているということに気づいて、ミラージュを俺の洗脳から解き放ってしまった。

俺は焦った。しかし、同時にめぐみのことにも興味を持ち始めた。

めぐみは自分の幸せよりも、他人の幸せの方を極端に優先する傾向があった。だから、ミラージュとブルーが元の鞘に収まった時、彼女は喜びはしたが、数々の戦いの中で、彼女の中の何かが変わりつつあった。彼女は、自分が「失恋」したことに気づいて、その感情の動き自体が初めての体験であり、それを制御できなくなっていた。俺はそこに付け入ることにした。

初めは彼女自身をミラージュのように操ろうとしたが、予想以上の意志の強さによりそれは失敗した。それは、彼女には幼馴染の「誠司」という心の支えがあったからだ。めぐみ自身は気づいていないようだったが、誠司は確実に幼馴染という関係を越えて、めぐみを愛している。俺は誠司の、めぐみを守りたくても守れない、自分の思いに気づいてくれない、という焦りを利用して、彼を操ることにした。

でも、それもめぐみの「愛」の前に結果的に失敗に終わった。俺は、自暴自棄になって、惑星レッドを地球にぶつけて、ともに滅びようという作戦に出た。

一方で、あれだけ「愛」を忌み嫌っていたはずの俺が本当に渇望していたのは「愛」だった、ということに気づかされつつあった。それを体現しているのは、他でもないラブリーことめぐみだった。だから、ラブリーに「俺を愛せ」と率直に告白した。

ラブリーは、俺のこんな歪んだ愛の形をも受け入れるような「フォーエバーラブリー」に進化した。その後の戦いは、自分でも敗れるということは分かっていた。しかし、しばらくは彼女と拳を交えながらも、語り合いたいと思った。こんな俺でも愛してくれる人間がいることが単純に嬉しかったのだ。結果的に俺は敗れて、惑星レッドも地球も救われた。

前置きが長くなってしまった。ラブリーことめぐみとの最終決戦の後、俺は、弟であるブルーと、彼の恋人(もう妻と言ってよいか)ミラージュともに、惑星レッドの復興に取り組んでいる。一度荒廃してしまった星を復興させるのはいばらの道だ。あと何百年、何千年、何万年かかるか分からない。時々絶望感に襲われることもある。そういう時に思い出すのが、めぐみの「愛」だ。

俺や弟は、鏡を使うことによって、自分の守護する星の様子を観察したり、行きたい場所へ移動することができる。復興に必要なものを地球から調達するために、その「力」をたびたび使うことがある。それ以外にも、俺のような「神」が、その「力」を使って、年頃の女の子の様子を観察するのは、本当は良いことではないことは分かっているが、めぐみのことが恋しくなった時は、彼女の様子を鏡を通して見ることがある。

めぐみは、仲間と元気に暮らしているようだ。誠司のことも、だんだんと意識し始めていることが分かる。それだけに、俺のめぐみへの思いも募っていくのだった。

めぐみと直接会って話がしたい。一度会えば、少しは自分の気持ちを鎮めることができる。連日の復興作業の疲れに加え、ブルー夫婦が自分の前で「いちゃついている」のも食傷気味だ。決めた。

今日は休日だし、めぐみが自分の部屋にいることは分かっていた。でも、いきなり現れるのは失礼だ。だから、鏡を通して呼びかけてみた。

「めぐみ、めぐみ」

「え、誰?どこから私を呼んでいるの?」

「ここだ。お前の部屋の姿見から呼んでいる」

「あっ、レッド!久しぶり!元気だった?今日はどうしたの?」

彼女はあの人懐っこい笑顔で次々と俺に質問をぶつけて来る。それだけでも俺は嬉しかったが、こっちに来いとは言ってくれない。当たり前だ。相手は年頃の女の子。男を簡単に部屋に入れることはできない。仕方がないので、こちらから申し出た。

「あ、あのな、めぐみ。言いにくいんだが、今からそっちへ行ってもいいか?」

「え、私と会いたかったの?だったら早く言ってくれればいいのに。遠慮しないでこっちにおいでよ。私だって直接会って話をしたいよ」

「本当にいいのか?普通の年頃の女の子は、警戒するものだぞ」

「え、レッドに変な下心があるとは思えないよ。確かに悪いことをしたかもしれないけど、私はレッドがそんな悪人じゃないことは知ってる。だからおいでよ」

そんなことを言われて、「下心」のある俺は恥ずかしくなった。促されるまま俺は彼女の部屋の中へ入った。

「本当に久しぶりだね、レッド。鏡を通して見るより元気そうで良かった。また会えて本当に嬉しいよ。あ、立って話しているのもなんだから、ちょっとちらかっているけど、その辺に座って。あまりお構いできないけど、今、お茶とお菓子を持ってくるから」

「いや、お構いなく」

俺が言い終わるか終らないうちに、彼女はキッチンへ走って行った。

その間に、彼女の部屋の中を眺めてみる。女の子らしいと言えばそうだが、割りとこざっぱりした感じだ。すると、机の片隅に、ピンクの光るものを見つけた。思わず手に取ってしまった。それは、最終決戦の後、ブルーがハピネスチャージプリキュアの仲間たちに渡した「愛の結晶」だった。

めぐみは確か、自分に大切な人ができたらこれをあげる、と誠司に言っていた。誠司もそれに同意した。誠司にはめぐみが大切なのは明白だから、誠司はめぐみと交換したいと思っているはずだが、めぐみからそれを言いだすまで、まだ関係は進んでいないらしい。少しホッとすると同時に、そんなことを思った自分自身に驚いた。

「あ、レッド、それ」

キッチンから戻ってきためぐみが、慌てた様子で声をかける。はっと我に返る。

「す、すまない。これはブルーがめぐみたちに与えたものだろう?」

「そう、私の宝物。私がプリキュアだったことは、苦しいこともあったけど、大切な思い出。辛いことがあると、これを見て、プリキュアだった私に乗り越えられない困難はないって、自分を奮い立たせることができるんだ」

「そうか」

その「思い出」の中には、ブルーへの恋も含まれているのだろうか。

「でも、そんなことに頼らなくてもいいくらい、私に誰か大切な人ができたら、その人にあげるんだ。でも、まだ本当に「大切」な人が誰かはまだ分からないんだ」

「そうか。そういう人が早く現れるといいな」

俺はめぐみの大切な人が誠司であることは分かっている。でも、そんなことを言うのは野暮だ。また、できればそれまでの時間が長くあって欲しいと、どこかで思っている。

「さあ、座って座って。惑星レッドのことをもっと聞かせて」

座るや否や、めぐみは胡坐をかいた俺の膝の間に、座ってもたれかかってきた。俺は少し慌てた。

「お、おい。無防備すぎるんじゃないか」

「言ったでしょ、レッドに変な下心があるなんて思っていないって。それに、私は一人っ子だし、お父さんもほとんど家にいないから、あまりこうしてもらったことがないんだ。レッドは、私にとってお兄さんみたいなものだから、ちょっと甘えさせてよ」

それから、俺とめぐみはいろいろな話をした。でも、話したことを良く覚えていない。俺はめぐみの体温をじかに感じ、どこか上の空だった。

ただ、めぐみの顔を見ると、うっすらと目に隈ができているのに気付いた。また、少し眠そうだった。

「めぐみ、なんだか眠そうだけど、大丈夫か?目に隈ができている」

「あ、分かっちゃった?女の子なのに恥ずかしいよ。あのね、私たちもう受験生でしょ?ひめは国に帰っちゃうみたいで寂しいけど、誠司とゆうゆうといおなちゃんは同じ高校を目指しているみたいで、私も一緒にそこへ入りたいんだ。だけど、プリキュアやってた時に、ブルーにも叱られたけど、私の成績は学年の下から数えた方が早いの。だから今、その分、勉強を頑張らなくちゃならなくて、毎晩遅くまで、誠司と一緒に勉強してる。って言うか、一方的に私が教えられているんだけどね。誠司は教え方は上手いんだけど、なかなか厳しくてね」

やっぱり、誠司のことが大切なんだな、と俺はちょっと嫉妬した。すると、めぐみは、ちょっとウトウトし始めた。

「おい、ちゃんとベッドで寝た方がいいんじゃないか。風邪をひくぞ。俺も帰るから。」

「ううん、大丈夫だよ。久しぶりに会ったんだから、もうちょっとゆっくりしていってよ。」

そう言い終わるや否や、めぐみはスーっと寝息を立てて、俺の膝の間で眠ってしまった。

「おい、めぐみ、起きろ。ちゃんとベッドで寝なきゃ」

「うーん、もう少し、こうさせていて、お兄ちゃん。ううん、わたしだけのかみさま・・・」

寝言だが、そんなことを言われて、俺はドキッとした。そして、帰るタイミングを逃してしまった。まあいいか、誠司がここに来るまで、こうさせてもらおうか。

<終わり>

2015年6月21日 (日)

ふたりのないしょばなし  - 「ハピネスチャージプリキュア!」アフターストーリー5 -

ある土曜日の夜、氷川いおなは、ブルースカイ王国大使館の白雪ひめの部屋にいた。しかし、全然落ち着かない。前日にひめに「お泊まり会しない?うちにおいでよ」と誘われたからだが、パートナーのぐらさんを連れてこないように釘を刺されたほか、リボンもめぐみもゆうこもそこにはいなかったからだ。しかも、ひめは今シャワーを浴びていて、部屋にはいない。つまりは部屋に独りきりだ。

すでに食事は終えていた。その料理もひめが一人で(正確にはリボンに「少し」手伝ってもらったそうだが)こしらえたそうで、見栄えは少し悪かったものの、量も質も満足できるものだった。また、シャワーも先に使わせてもらっていて、今はパジャマ姿だ。

いおなは落ち着かずにひめの部屋を見回した。自分の質素な部屋とはずいぶん趣が違う。とにかくぬいぐるみがたくさんある。特に大きなにわとりのようなぬいぐるみは目を引いた。近づいてよく見ると、少し汚れていて、ほつれもあった。ひめのお気に入りであることがうかがいしれた。

「お待たせー!」と急にパジャマ姿のひめが部屋に戻ってきた。いおなはびっくりして、そのにわとりから離れて、居住まいを正した。

「なんでそんなに緊張してるの?もっとくつろいだらいいのに。私といおなの仲でしょ?何も遠慮することはないわよ。なんならそのにわとり、貸してあげる。これね、結構抱きしめると落ち着くんだよ。私のお気に入りなんだ」

ひめはそう言って、いおなにそのにわとりを押しつけた。いおなは黙ってそれを受け取った。しかし、やはり落ち着かない。しばらく沈黙が流れた。

「いおなぁ、やっぱり私と二人きりだと落ち着かない?ディナーの時もあまりしゃべらなかったし」口火を切ったのはひめだった。

「実はそうなの。普段はだいたいみんなと一緒にいるし、それに、「お泊まり会」というからみんなと一緒なのかと思ったら、ひめと二人きりだったし。」

「仲間になる前とは違うんだから、気を遣うことなんてないよ。それとも、まだ私のことが嫌いなの?」

「そんなことないわよ。仲間になる前は私がひめの事情も知らずに一方的に憎んでいただけなんだし、幻影帝国との戦いももう終わったこと。ひめを嫌いなわけないでしょ。ひめのことは大好きよ」

「ありがと。でも、そのことなんだけどね」ひめは神妙な口調になった。

「今日いおなだけを招待したのはね、いおなに改めて謝りたいと思ったことと、ありがとうを言いたかったから」

「え?ひめはもう私に十分謝ってくれたわ。そのおかげで私はまたプリキュアに変身できるようになったし、みんなと仲間になって戦えた。ありがとうを改めて言わなければいけないのは私の方だわ」

「ううん、やっぱりこれだけは言わせて。3年間、いおなから大好きなまりあさんを奪ってしまって、本当にごめんなさい。」

「本当にもういいのよ。お姉ちゃんもひめのこと恨んでない」

「それから、この間の「プリキュアウィークリー」での私の謝罪会見で、いおなとまりあさんが私を一生懸命かばってくれた。本当にありがとう」

「あの時は大変だったわね。でも、かばったというのはちょっと違うわよ。それに、お姉ちゃんと私だけじゃない。ゆうこがキュアラインを使って、自分が助けた世界中のプリキュアに連絡を取ってくれて、みんなも一緒に会見に臨んでくれた。特にハワイのオハナとオリナは真っ先に駆けつけてくれた。そして、私たちの正体を知っている増子さんも味方してくれた。世界的大ニュースにはなったけど、あんなに引っ込み思案だったひめが、一切言い訳せずに謝罪した。本当に頑張ったわね。まさに「勇気のプリキュア」よ」

「ありがとう、私が強くなれたのはみんなのおかげだよ。それに私はブルースカイ王国の王女。将来は女王になるのだから、国の代表として当たり前のことで、いつかはしなければならないことだったから」

「いつもはお調子者のひめがしんみりしているのは、なんかこっちまで調子が狂っちゃうわ」

「ひどーい!せっかく人が真面目な話をしてるのに!」ひめは手足をばたばたさせた。

「本当にひめは一国のお姫様なの?たまに、というかいつもそれを疑っちゃうわ」

「しょ・う・し・ん・しょ・う・め・い・の・お・ひ・め・さ・ま!あんなことがなかったら、君たちは私と話できないどころか、近づくことだってできなかったんだからね!頭が高ーい!」

「よかった。いつものひめに戻って。私はそんなお姫様らしくないひめが好きよ」

「な、なんてこと言うのよ!照れるじゃないの!」ひめは真っ赤になった。

「と、とにかく、いおなが話をそらしちゃったから、この話はもうおしまい!これからは、ふたりだけのないしょばなしをしようよ」

「ないしょばなし?具体的にはどんな?」いおなはひめに顔を近づけた。

「うーん、まずは、プリキュアのことから始めよっか。私、前から不思議に思っていたことがあってね。いおなは神様から「愛の結晶」を受け取っていないのに、プリキュアに変身できたのよね?ずっとどうしてかな、って思っていて。神様自身も不思議だったみたい。自分の知らないプリキュアが活躍しているって」

「今はひめのおかげでフォーチュンピアノで変身しているけど、その前はプリチェンミラーで変身していたことは知っているわね。キュアテンダーことお姉ちゃんは世界中を飛び回って活躍していたプリキュアで、神様の信頼も厚かった。ひめがアクシアを開けてしまって幻影帝国が復活してしまったことなんかも、お姉ちゃんに話していた。神様はプリキュアであることを自分の家族にも秘密にするよう言っていたみたいだけど、お姉ちゃんは家族に自分がプリキュアであることやそういう事情を打ち明けてた。でも、神様は何も言わなかったみたい」

「だから、いおなは私がアクシアを開けてしまったことや、私の長ったらしい本名を知っていたのね。私はフォーチュンからいつも「あなたのせいよ!」と言われていて悲しかったし、なんでそんな秘密を知っているのか不思議だった」

「あの頃は本当にごめんなさい。でも私は、そんな世界を守っている強いお姉ちゃんが大好きだったし憧れていたの。お姉ちゃんがプリキュアハンター・ファントムに封印されてしまった日は、世界中を飛び回って世界中のプリキュアの助力をして回っていた頃で、久しぶりに家に帰ってきていたの。嬉しかった私はお姉ちゃんと出かけて、その帰り道にファントムと出くわした。お姉ちゃんは私の目の前で変身して、物陰に隠れているように言った」

「でも、負けちゃったのよね。。。」ひめの表情が曇った。しかし、いおなは悲しそうな表情をみせずに続けた。

「そう。初めは互角に戦ってた。だけど、卑怯にもファントムは、隠れていた私を見つけて、私を封印しようとした。それをお姉ちゃんがかばおうとして隙ができたところに、ファントムが再び攻撃を仕掛けて、お姉ちゃんはまともにくらってしまいダメージを受けて、変身が解けてしまった。そして、すぐにお姉ちゃんを封印した」

「そんなことがあったなんて。。。いおなが私を恨んでも仕方がないわね。本当にごめんなさい。」

「だから、もういいって。その時、ぐらさんが命がけでお姉ちゃんのプリチェンミラーを拾ってくれて、それを私に渡してくれた。私は悲しかったけれど、それよりも何よりもお姉ちゃんのかたきを討ちたかった。だから、プリチェンミラーに祈った。「私をプリキュアにしてください」って。そして変身呪文を唱えたら本当に変身できちゃった。自分でもびっくりしたけど、ぐらさんがいちばんびっくりしていたみたい。それで、ぐらさんは私のパートナーになったの」

「その時って、小学5年生だったのよね。そんなに小さかったのに、強かったなんてすごごごーい!」

「まあね。お姉ちゃんには今でもかなわないけれど、プリキュアになってから空手の稽古はそれまで以上に頑張ったことは確かね。だけど、プリキュアの力の源が「愛」なのに、私の場合はそうじゃなかった。幻影帝国への怒りはもちろんだけど、ひめにも恨みを持っていたからね。だから、本来なら私はプリキュア失格で、変身すらできなかったはずなの。今考えると、そちらの方が不思議ね」

「それは、いおなが私を恨んでいたとしても、まりあさんへの愛がそれよりも強かったから変身できたのよ、きっと。それに、私が負け続けていたときに、なんやかんや言いながらも、フォーチュンは私を助けに来てくれた。これも愛だよ」

「ありがとう。少し気持ちが楽になったわ。それに、私はひめにもっとありがとうを言わなけりゃならない。私がファントムに「プリキュア墓場」に連れてこられて封印されてしまいそうになったとき、真っ先にあの空間に飛び込んできてくれたのがプリンセスだった。私はひめをさんざん無視してきたのに、どうして?」

「いおなが私の秘密をばらしちゃった後も、めぐみやゆうこは私のことを友達だって言ってくれた。その喜びを感じていたときに、ふっといおなのことが頭をよぎったの。フォーチュンは確かに強いけど一人で戦っていて、本当は私と同じように怖いんじゃないかって。だから、めぐみとゆうこを仲間に誘ったんじゃないかって思ったら、いてもたってもいられなくなった。ちょうどその時に、ぐらさんがフォーチュンの急を知らせてくれた。プリキュア墓場には行けないと神様には言われたけれど、一生懸命祈ったら、奇跡的にあの空間に行くことができたの」

「あの時は変身も解けて、もうどうしようもなくて、絶望的になってた。でも、プリンセスたちが駆け付けてくれて、すごく嬉しかった。それにひめは、一生懸命集めたプリカードを私に全部くれた。そのおかげで、私はまたプリキュアの力を得ることができた。本当にありがとう」

「いいのよ。それでも私のしたことは全部償えたとは思ってない。でも、結局プリカードってなんだったんだろうね?」ひめはいたずらっぽく笑った。

「そうね。カードを使っていろいろ変装したりおしゃれを楽しんだりはしたけど、プリカードをファイルいっぱいにして願い事をかなえるということは、結局、私しかできなかった。だけど、その力を使わなくても、結果的にみんなの願いはかなったんじゃないかな。ひめは国を取り戻すことができたし、ゆうこの「世界中のみんながご飯をおいしく食べられるようになりますように」という願いも戦いが終わってかなえられた。ただ、めぐみの願いだけはかなわなかった」いおなは少ししんみりした口調になった。

「そうね。おかあさんの病気は治らなかったもんね」ひめも言葉を継いだ。

「でも、めぐみは「みんなの願い」をかなえてくれた。引っ込み思案な私を友達にしてくれたことをきっかけに、ハピネスチャージプリキュアとしてみんなと仲良くするきっかけをつくってくれて。そしてミラージュさんと神様の仲を取り持って、そのことで二人が幸せになっただけでなくて、レッドも地球も救うという大きな願いをね」

「そうね。でも、めぐみ自身の「幸せ」をもっと大切にしてほしいわよね」

「めぐみの幸せってなんだろう?神様には失恋しちゃったもんね」

「恋愛だけが幸せではないわよ。それに、そうだとしても相楽くんがそばにいるじゃない」

「あー、あの二人を見てると、じれったくて仕方ないのよね。めぐみも悪いけど、誠司はもっと悪い!」ひめは語気を強めた。

「あらあ、相楽くんにときめいちゃったひめが言えることかしら?」いおながいたずらっぽく笑った。

「あ、あれは「吊り橋効果」だったのよ!私の黒歴史!それに私の理想は、白馬に乗ったイケメンの王子様なんだから!」

「はい、はい。まあそれに、最近、毎朝通学途中で抜けると思ったら、ナマケルダもとい生瀬さんを起こしに行っているみたいだしね!」

「な、なんでそれを!」ひめは慌てた。

「あんまりそんなことが続くから、ぐらさんにこっそりひめの後をつけさせたの。そしたら、生瀬さんをたたき起しているひめを見つけたってわけ」

「み、みんなは知ってるの?」ひめはもうしどろもどろだ。

「ううん、このことはぐらさんと私だけのひ・み・つ。リボンにも言ってないから安心して」

「ううー、いおなに弱みを握られたー!やばやばいよー!」

「どうして?生瀬さん、確かに頼りないけど、よく見ればなかなかイケメンじゃない。それに、「人形の国」に行った時に、ひめが一目ぼれした「ジーク王子」にも少し似ているわね。でも、どうして生瀬さんを起こすようになったのよ?」いおなはたたみかけた。

「そ、それは、神様からもらった「愛の結晶」を投げたら、増子さんから逃げていた生瀬さんに当たっちゃったからよ!愛の結晶が当たった人と友達になるって決めていたから、前は敵だったかもしれないけど、友達になりたいと思ったの!でも、生瀬さんは、毎朝会社に遅刻するくらいだらしないから、しょうがないけど、毎朝起きているか確認して、起きてないみたいだったら起こしに行ってるの!」

「ぐらさんの話では、結構楽しそうだった、って言ってたわよ。いっそのこと国に連れて帰ったら?」いおなは容赦がない。

「ああー、うるさいうるさい!生瀬さんを国王なんかにしたら、「めんどくさいですぞ」とか言って、国の政治をほっぽり出して、国が傾いちゃうわ!」

「あら?私は「連れて帰ったら?」と言っただけで、別に「結婚したら?」なんて一言も言ってないわよ?」

ボッと音が出るくらい、ひめは真っ赤になってしまった。

「いおなはずるい!それに私と生瀬さんはそんな関係じゃない!この話はここでおしまい!そ、そんなことより、いおなの方はどうなのよ?」

「私の方って?」

「とぼけないで!海藤くんとはうまくいってるの?」

「裕哉くんとは・・・」と言いかけて、いおなは真っ赤になって、慌てて口を押さえた。

「ほほう、もう下の名前で呼び合っているのかね、いおなくん!」ひめはにやりと笑った。

「ああもう!そうよ!下の名前で呼び合ってるわよ!悪い!?」いおなはやぶれかぶれになった。

「別に悪くなんかないわよ。で、いおなの方からは告白したの?」

「ま、まだそんなところまでいってないわよ。裕哉くんとはいいお友達よ。好きとかまだ分からないわ」

「またまたぁ。「そんなところまでいってない」って、もう十分海藤くんのことを意識してるじゃない」今度はひめがたたみかけた。

「そ、そうかもしれないわね。ひめの言う通りかもしれない。高校も同じところに行けたらな、なんて思ってる」いおなは急にしおらしくなった。

「まあ、いおなの気持ちは分かったわ。もうこれくらいにしてあげる。それに、このことはめぐみたちにも黙っていてあげる。二人だけのひ・み・つ。その代わり、生瀬さんのこともめぐみたちにはしゃべらないで」

「分かったわ、約束する。あ、でも、ゆうこは何か勘付いているみたい」

「なっ!ゆうこは何もかもお見通しなところがあるから、怖い時があるのよね」

「ほんとよね。でも、この話はもうおしまい。ねえ、一度ひめの国のことをゆっくり聞きたかったの。なんで、シャイニングメイクドレッサーの力をひめが引き出す時に、日本の神社のお神楽に使う鈴を使ったのか、とか、そもそも何で日本のミラージュさんと別れた神様がブルースカイ王国にいてアクシアがあったのか、とかいろいろ知りたいことがいっぱいあるの」いおなは目を輝かせて言った。

「よろしい。このひめ大先生が教えてしんぜよう」

ひめは咳払いして、いおなの疑問に答えていった。そんな二人の夜は静かに更けていった。

<終わり>

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いおなはひめをずっと憎んでいました。途中で仲間になれましたが、あまり二人の直接の絡みの話がなかったので、やっぱりどこかお互いに遠慮していたところはあったと思います。

また、事情があったにしろ、ひめには「アクシアを開けてしまった」という厳然たる「罪」があります。例えばこれが現実世界であったら、ひめは世界中から糾弾されるでしょう。でも、ここは「ハピネスチャージプリキュア」の世界。勇気を出して謝ったら、許してくれるような優しい世界であってほしいと思います。

だから、二人のわだかまりを完全に解いてあげたくて、そして、ひめの「十字架」を解放してあげたいという思いで、このお話を書きました。

2015年5月18日 (月)

まったくしょうがないんだから! - 「ハピネスチャージプリキュア!」アフターストーリー4 -

「今日もぴかりが丘はいいお天気~♪ 明日もあさってもいい天気だといいな~♪」

「心の歌」を口ずさむめぐみを先頭に、ひめ、ゆうこ、いおな、誠司の5人と、リボン、ぐらさん、ファンファンの3匹の妖精は、いつもの通学路を学校へと向かう。

すると急にひめが立ち止まった。

「あ、ちょっと先に行ってて」

すると、ポケットからキュアラインを取り出して電話をかけた。そして何度かコールしたのち、電話を切った。

「あ~、また出ない。もうこの時間だとやばやばいよ~!」

「ひめ、どこに電話したの?それにこの時間ならまだ遅刻しないよ」

「まったくしょうがないんだから!ちょっと用事を思い出したから、めぐみ、みんなと一緒に先に学校に行ってて!」

ひめはそう言うやいなや、もと来た道へ踵を返して走り出してしまった。

「ちょっと、用事って何?ひめ、本当に遅刻しちゃうよ!」

「大丈夫!私が足が速いこと知ってるでしょ!」

ひめはあっという間に視界から消えてしまった。

「ひめ、最近こういうことが多いよね。それに通学の途中で用事を思い出すって変だよ」

「うふふ、ひめちゃん、頑張ってるな~♪」

「ゆうゆう、ひめのことなんか知ってるの?」「ゆうこ、ひめのこと何か知ってるの?」「大森、ひめのこと何か知ってるのか?」「ゆうこ、ひめのこと何か知ってるのですの?」「ゆうこ、おひめちゃんのこと何か知ってるのか?」「キュアハニー、キュアプリンセスのこと何か知ってるのか?」

同時に3人と3匹がゆうこに同じことを質問した。

「女の子には一つや二つ秘密があるものなのです♪今日もごはんがおいしくなりそう♪」

「なによ~、ゆうゆう!教えてくれたっていいじゃない」

そんなことを言いながら、ひめを除いた4人と3匹は学校に向かった。

一方、ひめは、息を切らしながら、少し古ぼけたアパートの一室のドアの前にたどり着いた。そして、呼び鈴を押した。しかし、反応はない。何度も押すのだが、反応はなかった。

「まったく、しょうがないんだから!」

しびれを切らしたひめは、ドアをドンドンと叩きながら、部屋の中へ向かって大きな声で呼びかけた。

「ナマケルダ!朝よ!まだ起きていないのは分かっているんだから!遅刻しても知らないわよ!」

するとしばらくして、ドタバタと物音がして、ガチャッとドアが開き、ぼさぼさの髪とシャツとパンツ姿の男が出てきた。彼の名前は生瀬。彼はかつて幻影帝国の幹部ナマケルダだった。

「うるさいですぞ、キュアプリンセス。それに私はもうナマケルダではないですぞ。その名前で呼ばれると、ご近所に白い目で見られるから、いい加減やめてくれませんか」

「あ、ごめん、生瀬さん。でもこれだけは言わせて!またそんな恰好で出てきて!私だって年頃の女の子なんだからね!それに、今はキュアプリンセスじゃないわよ!」

「ああ、そうでした。それでなんですか?こんなに朝早く?」

「朝早くじゃないわよ!もう何時だと思ってるの?会社に遅刻するわよ!」

「え?わっもうこんな時間!遅刻する!会社に行くのもめんどくさいですが、遅刻の言い訳を考えるのももっとめんどくさいですぞ!」

「だから、早く支度なさい。何度も私にこんなことさせるんじゃないわよ。まったくしょうがないんだから!」

生瀬は慌てて部屋に戻り、また何やらドタバタ物音がして、よれよれのワイシャツによれよれのネクタイ、よれよれの背広を羽織って、部屋から出てきた。

「なんとか間に合いそうですぞ。ありがとう、キュアプリンセス」

「だから、今はキュアプリンセスじゃないって。ひめって呼んでくれていいって何度も言ってるでしょ。」

「でも、あなたは一国のお姫さまじゃないですか。しかも私はあなたの国を侵略していましたし」

「それはもう終わったことでしょ。それにもう生瀬さんに恨みはないし。」

「分かりました。では、ひめ、なんでこうほぼ毎日、私を起こしに来てくれるのですか?」

「それは、生瀬さんが心配だからよ」

「あなたに心配されることはないですぞ」

「それは、それは・・・・」

ひめは、少し口ごもった。

「あ、愛の結晶が生瀬さんに当たったからよ。ほら、生瀬さんが『プリキュアウィークリー』の増子さんに追いかけられた日のことを覚えてる?私、あの後、神様からもらった愛の結晶を高いところから投げたの。」

「ああ、そう言えば、何か当たったと思って足元を見たら、何か光るものを見つけて、拾いましたな。あれはあなたが投げたものでしたか。そしたらすぐにあなたが私の前に現れた。でも、なんでそんな大事なものを投げたのです?」

「それは、それは・・・」

ひめは真っ赤になった。

「その結晶が当たった人と友達になるって決めてたから!そしたら、たまたま増子さんから逃げていた生瀬さんに当たっちゃったの!」

「私と友達になりたい、ということですかな?」

「そうよ、何度も言わせないでよ!それに、私たちが敵同士だった時に、何度も戦ったし、私の成長を最後には認めてくれたから。。。。」

ひめは、ますます真っ赤になってうつむいてしまった。

「ほらほら、会社に遅刻するわよ!それにそんなよれよれな恰好をして!顔はまあまあイケメンなんだから、もっと服装に気をつけた方がいいわよ。まったくしょうがないんだから!」

「では、あなたに今度、コーディネートしてもらいますかな。あなたも急がないと遅刻しますぞ」

「う、うん。」

「それと、また私が遅刻しそうになったら、起こしに来てくれますかな?」

「わ、分かったわよ。でも、生瀬さんも大人なんだから、中学生に起こされるようなみっともないことから卒業した方がいいわよ。私も卒業したら国に帰っちゃうんだからね。まったくしょうがないんだから!」

ひめは真っ赤になりながら、学校の方へ走りだした。

生瀬は彼女の背中を、ポケットから取り出した愛の結晶を透かして、見送っていた。

「まったく、しょうがなく不器用なお姫さまですぞ」

<終わり>

------

【5/20追記】

書きあげていた時は急いでいたので忘れてしまいましたが、このお話の元になったのは、これまでのお話でもお世話になっていた、ツイッターの絵師のフォロワーさんの「ナマひめ」絵です。この方のイラストは、単に「イラスト」にとどまらず、その奥にある「物語性」を感じさせてくれます。

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